2012年9月6日木曜日

第398話 お寺もタワーも関係ねェ!

年に何回か酒盃を交わす間柄の両先輩、
Sおサン&K雄サンと小宴を張る宵がやって来た。
会場の橋場「山海」へは前日の昼にも下見に訪れた。
そのとき、今年最大の発見、
いなり寿司の「ふじ多」に遭遇したのだった。
暗い夜ではまず気づかなかったハズ。
物事、何が幸いするか知れたものではない。

二人との待ち合わせは浅草の奥の奥、
吉野通りは清川2丁目の交差点。
J.C.は1時間前に現場に現れ、
軽く一杯飲る店の物色に余念がなかった。
3軒の候補店から1軒に絞り込み、
時間が余ったので「中福楼」という町場の中華屋へ。

近くに中華が少ないせいか、
狭い店内は立て混んでおり、おのずと相席に。
しょっぱいきゅうりと茄子のぬか漬けで生ビールを飲んだ。
オバちゃんの接客にアンちゃんの調理。
顔が似ているから間違いなく親子であろう。

入口近くのテーブルですでにデキ上がった、
グループのオッサンがデッカい声でしゃべっている。
「なんかオレ、ここんとこ淋しくてよぅ、
 オレ、昭和26年生まれなんだが、この間、上野動物園で
 オレと同い年のチンパンジーが死んじゃってよぅ・・・」
笑っていいものかどうか、でも何となくホンワカしたハナシ。

3人落ち合って向かったのは界隈随一の名酒場、「大林」。
名店ながらオヤジさんのキビしさと無愛想はつとに有名だ。
出会いがしらに血色のよいK雄サンがいきなりヤラレた。
「アンタ、飲んでないだろうネ?」
「いえ、いえ、飲んでない、飲んでない!」
そう、酔客は入れてもらえないのだ。
それどころか飲んでる客は酔ってなくとも一発レッド

生ビールが好きなSおサンには申し訳なかったが
瓶のクラシックラガーで再会を祝し、乾杯。
突き出しはニラのおひたし。
頼んだつまみは天豆(そらまめ)とキンピラを1皿ずつ。
二人とも店内の設えにいたく感嘆のご様子。
案内した甲斐があろうというものだ。

本会場の「山海」では待望の生ビールと白&赤ワイン。
いただきモノはかくのごとしである。

 ぶり大根(突き出し)
 刺身盛合わせ(真子がれい・生とり貝・赤貝・小肌・赤いか)
 胡麻河豚白子ポン酢
 鯨さえずりのベーコン&鯨赤身の竜田揚げ
 かにクリームコロッケ
 鳥とごぼうの釜めし

赤字は特筆モノ。
愉快な夜であった。

浅草の奥座敷といえば聞こえがいいが
日本堤・清川・橋場の地は
一般の東京人が忘却の彼方に押しやってしまったエリアで
浅草寺のご利益(りやく)ともスカイツリー効果ともまったく無縁。
寺もツリーも、そんなの関係ねェ!! なのだ。
でも、いや、だから好きなんだよなァ。
J.C.はこれからもずっと持ち続けますヨ、
愛しい場所とただれた肉体関係をネ。

「中福楼本店」
 東京都台東区日本堤1-24-16
 03-3872-8936

「大林」
 東京都台東区日本堤1-24-14
 03-3872-8989

「山海」
 東京都台東区橋場1-30-10
 03-3873-4731