2012年9月20日木曜日

第408話 関八州を見廻って (その1)

11年前に浦和・大宮・与野の3市が
合併して生まれたさいたま市。
その後、岩槻市も吸収合併して
現在は人口120万超えの大都市となった。
東京都の二大メガ市、
八王子と町田の合計100万を大きく上回る数字だ。

中でも最大の繁華街を擁するのは大宮だろう。
東北・上信越方面に向かう新幹線、
そのほとんどの列車が停まるターミナル駅でもある。
ところがJ.C.、なぜか大宮に縁がない。
最後に訪れたのは実に11年前、
そう、さいたま市誕生の年なのだ。

そのときは人気洋食店「紅亭」で晩めしを食べ、
酒場に流れることもなく、
都内に引き返したのではなかったかな?
いやはや、月日の流れの速いこと。

八月から九月にかけて日帰り圏内にありながら
これまで無縁、あるいはご無沙汰の町に小旅行を何度か企てた。
行動を振り返ると、江戸時代の関八州見廻り役に似ている。
その日は上州の高崎か伊勢崎あたりに出没する予定。
となれば、大宮は行きがけの駄賃であろう。
デスクの引き出しから”食のアンチョコ”を引っ張り出すと
大宮エリアには3軒の店名が記されていた。
うち2軒は駅の真ん前、これはつぶしておかにゃならない。

昼どきを少し過ぎた大宮駅に独り降り立った。
1軒目は開業六十有余年の「多万里」。
市民の絶対的な支持を得ている町の中華屋サンだ。
店先に63年間、変わらぬ味とあった。

席に着こうとすると、
「食券をお願いしま~す!」
「へェ、へェ」
500円玉と50円玉を投入し、ラーメンのチケットを購入。
ビールを控えたのは2軒目で飲むつもりだからだ。
人が言うほどレトロでもない店内

中華そば、いや、支那そばですナ
食べてみての素直な実感。
細めややちぢれ麺は柔らかすぎでスープも凡庸なあっさり系。
好きなタイプではあるが聞き及んだ評判ほどでもない。
東京でも都心を離れるとヒイキの引き倒しはままあること、
勘定を済ませて、いえ、食券を買ったのでした。

続いては大宮でもっとも名の知れた「いづみや本店」。
向かって左隣りには「いづみや第二支店」というのもある。
ガマンしていた生ビールをさっそく。
銘柄はサッポロで600円の中ジョッキが他店の大サイズだ。
さすが大宮一の大衆酒場だけのことはある。
ク、クックック~、たまりませんな。
上唇の泡を左手の甲でぬぐい、壁の品書きに視線を合わせた。

=つづく=

「多万里」
 埼玉県さいたま市大宮区大門町1-62
 048-641-3551