2012年9月25日火曜日

第411話 動物なのに動かぬ物 動物園こそわが楽園 Vol.2

先月からスタートした新シリーズ、”動物園こそわが楽園”。
今日はその第2回。
5月の連休明けにふと思い立って
上野動物園の年間パスポートを購入して以来、
わが東京散歩の根拠地は上野になった。

上野はきわめてユニークな街である。
お山の上は美術館・博物館・コンサートホールが
建ち並んでアカデミックな匂いが漂う。
徳川家ゆかりの寛永寺も雰囲気づくりに一役買っている。
ところがお山の下に降りると、
のどかなのは不忍池のほとりくらいのもので
あとは食欲と性欲がうずまくメルティング・ポットと化す。
この聖俗一体化が上野ならではの魅力なのかもしれない。

その日も日暮れる前には動物園に到着。
サル山のある東園(お山の上)より、
カバやペンギンのいる西園(お山の下)が好きで
鵜の池のほとりのテラスが気に入りのスポットになっている。

今日は西園の隠れた人気者を紹介しよう。
怠惰なことにかけては他の追随を許さず、
動物のくせにまったく動かないヤツ。
と言うと、読者はもうお判りでしょう。
そう、本日の主役はナマケモノだ。
Please, Do not disturb !
イチョウの枝を枕に昼寝の真っ最中。
自然界で寝るときには頭を前脚の中に隠し、
木の幹や枝と一体化することで
ジャガーなどの天敵から身を守るのだが、幸いここは動物園、
文字通り、枕を高くして寝られるワケだ。
両手足の鋭いカギ爪が身体を支え、落ちる心配もない。
自分の四つ足が見事にハンモックの役割をはたしている。

写真のイチョウの木は檻の外にあり、
中とはロープで繋がっている。
外に出てきたヤツがその気になって降りてくれば、
カメラを構えているJ.C.と握手できちゃう距離関係にある。
ただし、ナマケモノが地上に降りるのは
排泄のために週1回程度らしい。

とにかく動かないからほとんどモノを食わない。
葉っぱを1日に10g も食べれば生命が維持できるらしい。
しかも、哺乳類にしては珍しい変温動物で
気温に体温を合わせ、新陳代謝を抑えている。
食べる歓びなんか実感したこともなく、
ひたすら眠るために生まれてきたナマケモノは
自分自身が揺りかごみたいなものなのだろう。

一見、平和に暮らしているように見えても
生息地の南米では猛禽類(主にワシ)の獲物の3割がナマケモノ。
安らかに眠っているか、襲われて食われちまうか、
まさに”揺りかごから墓場まで”を地でいっっちゃってますナ。