2014年1月3日金曜日

第744話 日曜日の仔豚ハム

かれこれひと月以上も前の日曜日。
その日の散歩は荒川区・尾久から始まった。
昭和11年、帝都を揺るがす二・二六事件が勃発したその3ヶ月後、
尾久の待合旅館「満佐喜」で発生したのが阿部定事件。
世に有名な局部切取り騒動記である。
そのまた2ヶ月後の上野動物園黒豹脱走事件と合わせ、
昭和11年三大事件というのだそうだ。

大正時代に温泉が湧き出し、かつては遊興地として盛った尾久も
今となっては寂れにさびれて見る影もない。
まあ、それだけに一種独特の風情が漂い、散策する者の興を誘う。

南下して田端駅前の切り通しを抜け、動坂下に出る。
ここからは不忍通りをさらに南下して千駄木を東へ折れ、
やって来たのは谷中のよみせ通り。
夕焼けだんだんで有名な谷中ぎんざとTの字で交わる商店街である。

通りに沿って良質な精肉と肉加工品を
製造・販売する「コシヅカハム」に入店してみた。
当日の夜の予定はウチめし。
となると、適当な酒肴・惣菜を調達しておかねばならない。
散歩はまだまだ続ける予定につき、
あまり手の掛かる食材は購入したくない。
ほぼ出来合いで構わないのだ。

精肉店としてはかなり広い店内を一めぐりして
目を釘付けにされたのがコレであった。
スペイン産乳飲み仔豚ももハムは30本限定
こりゃまた珍しいものに出会ったものである。
ほどよく脂身がくっついてとても旨そうじゃないか。

100g=400円はかなり高級だけれど、
ここで買わなきゃ悔いが残ることになろう。
でもって写真のパックを買った次第だ。

自宅そばのパン屋でバターロールを2個買い求める。
ハムをつまみに飲んだあと、サンドイッチをこしらえる腹積もりである。
いくら仔豚とはいえ、ハムだけでは味気ない。
よって、やはり近所の鮮魚店で酢アジとバチマグロの赤身を少々。

そうしてこうして男やもめの晩酌開始と相成った。
ときに18時ちょうど。
日本TVの「笑点」でひとしきり笑ったのち、
ビールとハムでよ~いドン!
いかにも仔豚といったふう
何もつけずにまず1切れ。
2切れ目にはディジョン・マスタード。
あとは白胡椒だの、イングリッシュ・マスタードだの。

うん、うん、美味しいな、うれしいな。
ビールを赤ワインのキャンティに移行させ、
残りのハムにアジやマグロも参加させ、
独り身の自由を満喫したのでありました。
頭の中ではさっきまで見ていた番組のテーマミュージック、

 ♪ チャンチャカ チャカチャカ スッチャンチャン ♪

が、鳴り響いておりましたとサ。

「コシヅカハム」
 東京都文京区千駄木3-43-11
 03-3823-0202