2014年1月22日水曜日

第757話 みちのくの麺処 盛岡へ (その1)

旧臘は大晦日。
仙台発9時42分の東北本線で盛岡を目指す。
普通列車につき、小牛田(こごた)と一ノ関で乗り換える。

途中、伊豆沼に近い新田(にった)駅辺りだったかな、
車窓から刈入れの済んだ田畑を見やると、
シベリアから飛来した白鳥の一群あり。
野生の白鳥なんてなかなかお目に掛かれない。
旅愁を誘(いざな)われ、うれしくなった。

眺めている間にも次から次と舞い降りてくる。
落ち穂をあさっている様子だ。
それにしても大型の鳥類、白鳥の群れの空腹を満たすほどに
稲穂はこぼれ落ちるものだろうか。

藤原氏ゆかりの平泉を過ぎゆく。
時間が許せば立ち寄りたいところなれど、
わが旅の目的は訪れた土地で食べ飲み歩くこと。
名所旧跡をめぐる旅ではない。
よって、文化遺産よ、さらばじゃ!

雫石川を渡ってすぐ、今度は北上川を渡ると盛岡駅。
太平洋に面する岩手県だが、ここまで北上すると
気温も一気に降下してくる。
盛岡城跡公園の濠も凍てついていた。
この頃、都心の日比谷公園でさえ、
噴水が凍ったというから、さもありなん。

盛岡にはご当地三大麺というものがある。
世に有名な順番から挙げると、
わんこそば・冷麺・じゃじゃ麺だ。
今回はそのうち、冷麺とじゃじゃ麺を食するつもり。

わんこそばはハナから興味がない。
ああいった食べものの食べ方はしたくない。
TVチャンピオンの大食い選手権や
運動会のパン食い競争じゃあるまいし・・・。
J.C.はワンコ派じゃなくて、ニャンコ派だもんネ。

盛岡駅からもっとも近い「大同苑」へ。
大型の朝鮮焼肉店は冷麺だけでも食べさせてくれる。
昼めしどきのピークを過ぎたのに店内には短い行列ができている。
接客係の娘さんに名前を訊かれ、順番待ちリストに追加された。
追加されたが、ここで考えた。

確か、次に向かう「白龍(パイロン)本店」は
大晦日だから15時閉店の早仕舞い。
ここで時間をつぶしていては到底間に合わない。
よって先刻の娘さんに
「またあとで来ます」と断り、じゃじゃ麺発祥の店「白龍」へ急いだ。

岩手県は日本全国43県のうち、もっとも広大な面積を持つ県。
ところが県庁所在地の盛岡はコンパクトな街だ。
冷麺屋とじゃじゃ麺屋は500mと離れていなかった。
5分足らずで到着したが、ありゃりゃ、マイッたぞなモシ。

=つづく=