2014年1月14日火曜日

第751話 紅燈の江東を往く (その2)

四つ目通りを南下して住吉の交差点へ。
2軒目はやきとりの「ひびき庵 住吉店」。
あえて焼き鳥とせずにやきとりとしたのは
ここが埼玉は東松山の代名詞、やきとりの専門店だから。
彼の地では豚のカシラの串焼きに味噌ダレを添えて出す。
豚肉なのにやきとりと称するのだ。

キリン一番搾りの中ジョッキを飲みつつ、
感心しない突き出しをつまむ。
コンニャク・ゴボウ・シイタケ・切干し大根だのを
炒め煮にしたピリ辛味の小鉢だが
こういうのおっつける店が多いんだよなァ。
とても客には出せないモノでもチャージしてくる。
まっ、客からすれば必要経費なんだろうがネ。

名物のカシラだけではカッコがつかないから
品書きに黒豚焼きとんとあったのを頼んだ。
その2本がコレ。
ともにネギマ仕立てで手前がやきとり
カシラは豚のコメカミ、黒豚焼きとんはバラかロースみたいだ。
脇にチョコンと味噌ダレが添えられている。
正直いうとJ.C.はこのスタイルを好まない。
はるか昭和の甘辛いタレでじゅうぶんじゃなのに―。

いただいてみると、あんまり美味しくないねェ。
なんだってこんなもんが好きなのかねェ。
でも、若者には人気があるらしい。
いえ、いえ、本場では老若男女を問わず、
絶大な人気を誇っているとのことだ。

とにかく塩と白胡椒が効きすぎ。
特に塩味が強烈だから薄味派にはキツい。
味噌の味見をするとニンニクが主張してやや甘め。
甘めでもやきとりにつける気になれなかった。

おそらく東松山では
ごはんのおかずにも一役買っているのではないかと思う。
酒を飲まない子どもには味が強すぎるもの。
実際にこの店の持ち帰りコーナーに立ち寄る客は少なくない。
時間が時間だから家庭の主婦の姿はないけれど、
仕事帰りのOL・リーマンがやって来るのだ。

数席しかないカウンターの右隣りは中年の女性客が独り。
彼女はきゅうりや大根のスティックを
味噌につけてモリモリ食べている。
そうだよなァ、こういう食べ方なら
けっこう毛だらけ、猫灰だらけなんだろう。

ふと足元を見るとウチの猫が眠っている。
まるで左甚五郎の名作のようにネ。
フン、のんきなもんだ。

=つづく=