2014年1月6日月曜日

第745話 北関東で豚・ぶた・ブタ (その1)

旧臘(きゅうろう)の一日。
北関東をめぐる日帰りの旅に出た。

最初に降り立ったのは群馬県の交通の要衝、高崎。
駅の売店をのぞいたら紅・白のだるま弁当に交じって
横川名物・峠の釜めしが売られている。
そういえば上野駅の新幹線改札前でも見掛けたっけ・・・。
信越線のダイヤが改正され、売れ行きが危ぶまれたが
高速道路のパーキングエリアなどに売場を拡げて
以前より売上を伸ばしているようだ。

確かにこの駅弁は秀でている。
釜めしは年に一度食べるか食べないかなのに
目にするとつい買っちゃうもんなァ。
ただ、こうあちこちで売りまくられては何だか鼻白む。
今後は食指がストライキを起こすかもしれない。

高崎到着時刻は正午ちょい前。
目指したのは事前に目星をつけた「栄寿亭」なる洋食店。
創業は実に大正8年
第一次大戦集結の翌年だ。
青島要塞で降参したドイツ人捕虜が
日本各地でハム・ソーセージを造り始めた頃のこと。

この「栄寿亭」のウリは400円という信じがたい値付けのかつ丼A。
3枚の小さく薄いカツ片がごはんに乗ったタレカツ丼である。
品書きに一筆あったように、これは俗にいうソースカツ丼ではない。
甘辛の和風タレが味付けのポイントになっている。
米はコシヒカリ、肉は上州もち豚とあった。

店内は15席ほどのカウンターのみ。
外側の客席より中の厨房のほうが3倍近く広い。
到着したのは12時15分だったから
幸いにも昼のピークを迎える直前ですぐに座れたが
ものの5分と経たないうちに順番待ちの列ができ始めた。

右隣の若者がカツカレーを食べている。
黄色いカレーの香りに懐かしみを嗅いだ。
左隣りのオジさんはかつ丼Bだ。
これは玉子でとじたオーソドックス・タイプで450円。
チラリのぞくと三つ葉のほかに椎茸が散見される。

J.C.が注文したのはもちろん基本のかつ丼A。
たくあんを従えて登場
何ともシンプルな景色は殺風景ですらある。
キャベツも不在なら味噌椀もつかない。
周りを見回しても、みな汁ナシだから椀物は作らない主義なのだろう。

カツを1枚パクリとやった。
やったはいいが、前歯の噛み切りが悪く、
薄い豚肉だけが中からズルズルと引きずり出された。
残ったコロモは脱け殻もいいところだ。
2枚目からはグッと心を引き締めてカツを噛み締めるJ.C.でありました。

=つづく=