2014年1月27日月曜日

第760話 みちのくの麺処 盛岡へ (その4)

陸中・盛岡の日本そば店「直利庵」で
独創的な種物、あゆそばに舌鼓を打ったところ。
それにしてもユニークな品書きは他店の追随を許さぬものがある。

時間がたっぷりあるのでビールをもう1本。
相席になった地元のオバさん二人の注文品が運ばれてきた。
一つはかきそば。
大粒のオイスターがそばつゆに浮き沈みしている。
もう一方は先刻想像をめぐらせた、いもの子そばだった。
チラリ横目で盗み見ると、
おう! 里芋がコロリンコじゃないか。
舞茸もたっぷり入っている。
あゆそば同様にささがきのみょうがもこんもりと。

食べ始める前にオバさんたち、追加の注文を発注した。
それがやはり先ほど刺激された、おろし中華であった。
聞き違いでなければ、
「半おろし中華二つネ」と聞こえた。
これは実物を目にするまで席を立てないゾ。
つとめてビールをゆっくり飲みながら、おろし中華の到来を待つ。
オバさんたちは里芋とかきの物々交換を始めたりもして
なかなかに少女風、ハハ、無邪気なものだ。

10分ほど経ったかな?
オバさんたち待望の、
いや、J.C.にとっても待望の、半おろし中華が登場した。
おや、まあ、なんと、どんぶりの中央に
水気を切った小さな団子状の大根おろしが
ちんまりと乗っかっているではないか!
中華そばに大根おろしねェ。
すじこそばにも驚かされたが、この発想は他店にはまったくない。
いや、実に奇想天外な店だったぜ、「直利庵」は!

夕闇迫る北国の街。
今宵の宿も仙台。
ここ十数年、「紅白」への興味が失せており、
早く戻ってTVを観る必要がない。
よって盛岡をまだウロウロするつもりである。

ふと思い出したのが、すでにあきらめたじゃじゃ麺だ。
何せ年末年始のこと、旅に出る前に飲食店をいろいろ調査した。
「白龍本店」にも電話を入れたが
じゃじゃ麺発祥の店は市内の川徳デパートにも出店している。
確か大晦日でも夜まで開けているはずだった。

出向いてみたらやはり、やってた、やってた。
デパ地下のカウンターだけの小さな出店(でみせ)。
昼どきの本店と違って行列もないし、むしろ閑散としている。
べつにお腹は空いていないけど、
とにかく試してみなくっちゃ、そう決断したのでした。

=つづく=

「直利庵」
 岩手県盛岡市中ノ橋通1-12-13
 019-624-0441