2014年1月29日水曜日

第762話 みちのくの麺処 盛岡へ (その6)

岩手県・北上の駅は待合室もなく寒々としていた。
栃木の足利もそうだったが列車を待つ間、
駅に身の置き場があるとなしでは大違いだ。
北国の停車場ならなおさらのこと、
殊にお年寄りの身体にはこたえるだろう。

乗り継ぎの待合わせは1時間弱。
大つごもりの北上の街を歩くとするか・・・。
取りあえず駅周辺のMAPを見てみよう。
近所には何もなさそうだ。

近郊MAPに目を移したとき、ある駅名に目がとまった。
”江釣子”。
これはえづりこと読む。
JR北上線で二つ目の駅

以前、行きつけた浅草は観音裏のスナック「N」。
ここの常連にO野サンというフォトグラファーがいて
この人の持ち歌が「江釣子のおんな」。
振り返れば、おそらく10回は聴かされているだろうな。

 ♪ 雨がね雪がね 肩にふりかかる
   わたしは よわくて だめになりそうよ 
   ひとり今夜も 北上駅で 
   遅い列車を 待ちました  ♪
       (作詞:池田充男)

歌っているのは竹川美子。

ある夜、店のママに
「ねェ、オカザワさん、江釣子ってなんのこと?」―こう訊かれ、
「さあネ、どこかの地名じゃないの」―こたえたものの、
その後調べることもせず、うっちゃっておいた。
ひょんなことから謎が解けたのだ。
もっともネット検索すれば
ただちに解明することだから、ハナから謎ではないわな。

駅の周りに身の落ち着け場所が見つからない。
駅前の商業ビルに大手居酒屋チェーンがあったので入ってみたら
銭湯みたいな玄関で靴を脱ぎゃなきゃならない。
何だか面倒だし、第一、単独客なんか迷惑がられそうだ。
中から店員が出てこないのをいいことに
逃げるようにして退散の巻である。

結局、駅舎に隣接したホテル・メッツへ。
1Fに中国料理店をみとめたからだった。
店の名は「蓬莢楼」、さっそくビールだ。

じゃじゃ麺の(小)ですら残したくらいだから
マイ・ストマックはもう何も受けつけてくれそうにない。
くれそうにないが料理屋でビールのみではいけない。
苦肉の策がピータン豆腐であった。
突き出しのザーサイとともに味わうともなく味わい、
いっときを過ごして駅に戻り、仙台への帰路に着く。

=おしまい=

「蓬莢楼」
 岩手県北上市大通り1-1-34
 0197-63-6107