2014年1月15日水曜日

第752話 紅燈の江東を往く (その3)

地下鉄都営新宿線・住吉駅前の「ひびき庵」にいる。
豚の串焼きをつまみに飲んでいる。
視線をぼんやり壁に移すと、
全や連の川柳募集ポスターが目についた。
全国やきとり連盟だか、連合会だか存ぜぬがレイジーなJ.C.、
応募のための一句をひねる気にもならないし、
会の正式名称を調べもしない。

カウンター内の女性が笑顔を絶やさず、
接客も丁寧でさわやか。
ハッキリ言ってカシラよりカノジョのほうがいい。
その彼女がウォッチしているのは
やきとりを焼くためのロースターだ。

文章にすると伝わりにくいが串に刺したあと、
逆さにしてぐるりと回す独特の小型ロースターはベルトコンベヤ式。
ちょうど一周で焼き上がる。
いや、多少の追い焼きあるかもしれない。
こういうのは初めて見た。

品書きにはこうもあった。
およそ人口10万人の東松山市には約100軒のやきとり店があって
その人口割合は日本でもっとも多い町なんですと―。
まあ、客観的にみて、いいのか悪いのかはよく判りませんがネ。

夜もだいぶ更けてきたので、そろそろ締めにかからねば。
新大橋通りを西に進む。
行く先は「かねまん」という名の居酒屋だ。
「かねまん」と聞くと
浅草や人形町のふぐ料理屋が第一感として浮かぶ。

ところがこの店はいたって庶民的な飲み処なのだ。
ここでも独り者はカウンター。
目の前の品書きボードを少々紹介しておこうか。

 ふぐ皮ポン酢・甘海老刺身・うなぎ肝串焼き 各480円
 鳥の唐揚げ・ばい貝煮つけ・かきフライ 各530円

ふ~む、これといったクリーン・ヒットはないが
そこそこ上手にまとめ上げた感ははある。 
海のミルク好きのJ.C.は当然、かきフライをお願いした。

少々、手持ち無沙汰につき、備え付けの漫画本を手にとる。
矢島正雄&弘兼憲史のコンビによる「人間交差点」だった。
近頃はちっとも漫画を読まなくなったが何となくなつかしい。

出来上がったかきフライはけっこうなサイズである。
大粒のかきが3個づけ
切盛りは中年に差し掛かるご夫婦二人。
店内は「かねまん」の名に恥じぬ繁盛振りを呈していた。
かくして紅燈の夜はその帳(とばり)を落としたのでありました。

=おしまい=

「ひびき庵」
 東京都江東区住吉2-24-7
 03-3633-3969 

「かねまん」
 東京都墨田区菊川1-7-10
 03-3634-9923