2014年1月7日火曜日

第746話 北関東で豚・ぶた・ブタ (その2)

上州・高崎の「栄寿亭」にいる。
ズシリと重いどんぶりを左手に持っている。
かつ丼Aの味はけして悪くない。
ただ、ごはんの盛りがあまりに多く、とても食べきれなかった。

人気のメニューはかつ丼系が主力でカレーがそれに準ずる。
ときたまロースカツ、ポークソテー、ハンバーグの声が挙がる。
持ち帰りの客も少なくない。

厨房内は男性2人、女性4人の計6名。
接客は揃って明るく丁寧でとても感じがいい。
こんな食堂は大好きだ。
よほど職場環境がよいのだろう、
楽しく働けているからこそ、客への心配りが産まれるわけだ。

腹ごなしに市内を徘徊する。
駅前にあった1軒の飲食店の姿に度胆を抜かれた。
屋号は「朝鮮飯店」
近ごろこういう時代がかった建物がめっきり減った。

加えてこのランチメニューは何なんだ。
和風パスタにジャンバラヤだとっ!
こんなコリアン見たことないぜ。
また高崎に来る機会があったらぜひとも立ち寄らねば―。

上毛線・小山行きの列車に乗る。
北向きの車窓に映るのは国定忠治ゆかりの赤城山だ。

 ♪ 男ごころに 男が惚れて
   意気がとけ合う 赤城山
   澄んだ夜空の まんまる月に ♪
       (作詞:矢島寵児 )

東海林太郎の「名月赤木山」。
天然パーマとロイド眼鏡がまぶたに浮かぶ。
ついでに直立不動の”気をつけ姿”も。

列車はさらに東へ。
窓の外は足尾山地の山並みに代わった。

未踏の伊勢崎で下車。
この街はイセサキと呼ぶのが正しい。
イセザキと濁ると、ハマの伊勢佐木町になる。
駅から歩きだしてはみたものの、
何にもないとこだネ、ここは!

それにしても北風が冷たい。
上州のからっ風とはよく言ったものだ。
ここにはただ風が吹いているだけ。

 ♪ 人は誰もただ一人 旅に出て
   人は誰もふるさとを 振りかえる
   ちょっぴりさみしくて 振りかえっても
   そこにはただ風が 吹いているだけ ♪
            (作詞:北山修)

今度ははしだのりひことシューベルツの「風」が
からっ風に乗ってやって流れて来た。

=つづく=

「栄寿亭」
 群馬県高崎市あら町7-1
 027-322-2740