2014年7月3日木曜日

第873話 なぜに演歌は北へゆく? (その2)

裕次郎の歌声が耳に心地よい、
「北国の空は燃えている」に触発されて
主人公が北ではなく、
どこかほかの方角へ向かう曲はないものかと、
ヒマにまかせて思い浮かべてみた。

歌謡史専門の書籍をあたったり、
インターネットで検索してみたわけではない。
自分の記憶をたどっただけである。

最初にピンと来たのは太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。

 ♪  恋人よ ぼくは旅立つ 
  東へと向う列車で 
  はなやいだ街で 君への贈りもの 
  探す 探すつもりだ       ♪
       (作詞:松本隆)

行く先は東。
ただし、この曲は演歌とはいえない。
J・ポップにカテゴライズされてしかるべきだろう。
第一、恋人と別れていない。
贈りものを買って帰るんだからネ。

北とは真反対の南はないものか?
そこで浮かんだのはサザンの「チャコの海岸物語」。

 ♪ 恋は 南の島へ翔んだ 
  まばゆいばかり サンゴショー 
  心から好きだよチャコ 抱きしめたい ♪

南に翔んではみたものの、
桑田佳祐の佳曲とて演歌にはほど遠い。
北に向かってこそ演歌、
東京人が”南”に抱くイメージは陽気で明るすぎる。

はて、困った。
南がダメなら西はどうだろう?
浮かんだのは往年のデュオ、チェリッシュだった。
そう、「なのにあなたは京都へゆくの」である。

 ♪ 私の髪に 口づけをして 
   「かわいいやつ」と私に言った 
   なのにあなたは京都へ行くの 
   京都の町は それほどいいの 
   この私の 愛よりも      ♪
      (作詞:脇田なおみ)

”あなた”は西へ向かったが、これもやはり演歌とは呼びがたい。

ほとんどあきらめかけたとき、
ひらめいたのが、またもや藤圭子であった。

=つづく=