2014年7月10日木曜日

第878話 秀治爺さんが愛した酒場 (その1)

二ヵ月に一度、好きではない渋谷の街に出る。
髪を理するためである。
ヘアサロンは渋谷区役所の真ん前にあり、
距離的にはJR原宿駅(千代田線・明治神宮前)と渋谷駅の中間にあたる。

行くときは明治神宮前で下車することが多い。
渋谷駅前は人混みが半端じゃないからネ。
かの有名なスクランブル交差点なんぞ渡る気がしないもの。
ここでふと思ったことに
若者を中心に”半端でない”を
”半端ない”とハショるようになったのはいつ頃からだろうか?
ここ5~6年前からのような気がしないでもないが、定かではない。
耳障りでキラいな言葉だ。

若者はともかくも、近頃では年配者まで使うようになった。
先日も還暦を過ぎたのみともが
いけシャアシャアと”半端ない”を連発するのにウンザリ。
たまりかねて(べつにたまりかねることもないのだが)、
言ってやったネ。

「いい歳こいて、そのはすっぱな言い方は何とかしろヨ。
 それこそ半端者扱いされるゾ!」
「ンなことどうでもいいじゃないの。
 あんまり細かいことゴチャゴチャ言ってると、老け込んじゃうヨ」

言われてみりゃ、それもそうだナと思った次第。
どうせ馬の耳に念仏だし、早急に話題を変えた。

おっと、理髪であった。
通っているヘアサロン「B」はあまりに大仰な店名につき、
こちらのほうが恥ずかしくて紹介しかねる。
オーナーの趣味だろうが、その臆面のなさに脱帽だ。
J.C.の髪の手入れをするのは愛娘(まなむすめ)のK子チャン。
彼女とのつき合いは軽く10年を超えるだろう。

ニューヨークから帰国後、
日本橋室町のオフィスに通い始めた。
往時、苦労したのが理髪店探し。
何年か前に日本チャンピオンになった、
店主が営む床屋なんぞにも行ってみたが
あまりに時代遅れのダサさに閉口したものだ。
こちらの注文に応じて店主、いろいろイジクるのだけれど、
どう頑張ってもデビュー当時の橋幸夫か
三田明みたいになっちゃうんだよねェ。

こりゃ日本の床屋はダメだぜ。
そう思い、相談したのが当時のGFだ。
青山界隈のサロンに出入りしていた彼女が探してきたのが
表参道の「ブランコ」なるお店。
発祥は名古屋でその後、東京を始め、
あちこちに進出した一種のチェーン店であった。

=つづく=