2016年10月4日火曜日

第1461話 初めて歩く土浦の街 (その1)

  ♪    若い血潮の 予科練の
     七つボタンは 桜に錨
     今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ
     でっかい希望の 雲が湧く  ♪
        (作詞:西條八十)

軍歌の代表歌の一つ、「若鷲の歌」が世に出たのは
太平洋戦争も敗色が濃くなりつつあった1943年。
歌は波平暁男と霧島昇の共演だった。
戦意高揚のために作られた映画「決戦の大空へ」の主題歌で
作詞の西條八十と作曲の古関裕而は
土浦海軍航空隊に一日入隊して曲作りのヒントにしたそうだ。

「若鷲の歌」は「予科練の歌」とも称される。
舞台は霞ヶ浦のほとりにあった土浦の航空隊。
多くのパイロットを育成した教育機関でもあったが
敗戦の年、1945年6月10日の米軍による空襲で壊滅し、
180名を超える戦死者を出している。

今話の舞台はその茨城県・土浦市。
土浦は10年ぶりの再訪になる。
その折は街を散策する機会に恵まれなかった。
仕事がらみで欧風レストランと韓国料理店で連食したあと、
駅前のボテルに一宿、翌朝の電車で東京に戻った。

今回、到着したのは14時すぎ。
さっそく進路を東にとり、霞ヶ浦へ向かう。
浦へ注ぐ桜川の土手沿いを歩いていった。
その名の通り、土手には桜並木が。
シーズンに訪れたらさぞ美しかろう。

川面に多くの水鳥たちを見ることができた。
数多いのは漆黒のカワウと純白のコサギ。
彼らは別段、黒白(こくびゃく)をつけようともせず、
のどかに共存している。
この平和主f義、どこかの国の指導者に見習わせたいものだ。

アオサギが岸辺で小魚を狙っている。
河口にはオオバンの番(つがい)が共泳している。
その真っ白な鼻筋は歌舞伎役者さながら。
体験したことはないが
ちょいとしたバードウォッチングを楽しんだ気分だ。

30分ほど歩いて霞ヶ浦に到着。
ときおり湖面から小魚が跳ね上がる。
近年、霞ヶ浦ではワカサギ・シラウオなど、
特産の魚種はその漁獲量が激減しており、
漁業生産者はエビ・アミ類に頼らざるをえないのが現状らしい。

代わりにのさばってきたのが
ブラックバスやキャットフィッシュ(アメリカナマズ)の外来種。
ナマズなんかは食味がよく有効利用されそうだが
ここに一つの問題があった。

=つづく=