2016年10月20日木曜日

第1473話 ウサギに惹かれて湯島の夜 (その5)

だだっぴろい中国全土の料理をカバーする、
多彩なメニューを誇る「喜羊門」。
最初に選んだ前菜はラオフーサイであった。
中国語では老虎菜と書くのだろう。

年老いて歯の衰えた虎でも
食べられる野菜料理という意味合いを持つネーミングらしい。
聞くところによると、
神戸に「老虎菜(ラオフーツァイ)」なる人気料理店があるそうだ。

内容は細切りの玉ねぎ・きゅうり・ピーマンに
香菜(パクチー)と青唐辛子が散っている。
大した工夫のない一皿ながらスターター、
あるいは箸休めとしては悪くない。

紹興酒に切り替えた頃に目当てのウサギ辛味炒めが登場。
サイの目に切られたウサギ肉と野菜が同居している。
この皿を目にした客は十人が十人、鶏肉と思うに違いない。
味もメリハリに欠けてイマイチ、ピンとくるものがまったくない。
かなりの量で完食に至らなかったこともあり、
ハッキリ言ってミスチョイス。
強烈な肩透かしに哀れJ.C.、黒房下に転げ落ちの巻である。。

追加料理は相方の選んだ小籠包子と
当方が反対を押し切って強行採決した羊のキドニー(腎臓)。
実は腎臓と睾丸で迷った末の決断だった。
もっとも睾丸だったら相手を説得できなかったろう。
それにJ.C.はかつて紅顔の美少年、
紅顔に睾丸は似合わないよネ。

ところがこのキドニーで再び大失敗。
仏料理店で見掛けたら必注の好物ながら
臭みの除去が不十分なうえ、ほとんど素焼きに近いから
どうにも手に負えず、半分以上残してしまった。

やはり下処理は大事だヨ。
フレンチやイタリアンでは丁寧な処理のあと、
マスタードやクリームで上手に味付けするもんネ。
それに使用される素材はたい仔牛の腎臓。
親か仔か定かでないが羊はキビし過ぎるものがあった。

せっかく誘いに乗ってもらったのに、これでは面目丸つぶれ。
何か妙手はないものか?
ここは一番、早目の損切りであろう。
世に見切り千両なる先人の名言があることだし、
河岸を替えるしか手立てはあるまい。

取り合えず会計を済ませ、階下に降りる。
春日通りをへだててハス向かいにカレーの人気店、
「デリー本店」に賑わいが見えた。

=おしまい=

「喜羊門」
 東京都文京区湯島3-38-11 エスパス上野広小路4F
 050-5785-9836