2016年10月18日火曜日

第1471話 ウサギに惹かれて湯島の夜 (その3)

文京区・湯島の「喜羊門」である。
丸焼きにされて食われてしまう羊が喜ぶとも思えぬが
店名は喜ぶ羊の門出なのである。

さて、大グループで羊をいくか、
小グループに抑えてうさぎにするか、
迷うところでありました。

ところがHPをつぶさに眺めていると、
羊足の丸焼きもウサギの丸焼きも
3~4人前で4800円(税抜き)とあった。
写真で見ると羊は
とても3人の手に負えるものではないように映るが
それほどのボリュームではないようだ。
ほかにも羊背中丸焼きというのもあり、
こちらは2~3人前で3800円とあった。

でもねェ、惹かれたのはウサギだし、
ここは初心貫徹でいこうじゃないの。
仕方がない、3~4人集めてみようか・・・。
頭の中で候補者選びを始めた。

なおもメニューをチェックしていたら
ウサギの辛味炒めというのが目に飛び込んできた。
ん? これはいいじゃないか。
本来は丸焼きをいきたいところなれど、
わずらわしさを考慮すれば、
落としどころをわきまえることこそ肝要なり。

大グループでガッツリでなく、
小グループでジックリでもなく、
たった二人でシッポリに切り替えることにした。
思い立ったが吉日、
食友のT栄サンに誘いのメールを発信する。

1週間後、二人してエスパス上野広小路の4階に上がる。
週末のせいか店内には家族連れが目立つ。
それもほとんどファミレス状態で
ワイワイガヤガヤ騒がしいったらありゃしない。
数のうえでは日本人より中国人がはるかに優勢だ。

 お客様 お食事買い物 お静かに

かのヒット川柳が脳裏をよぎる。
それにしてもこの騒音、何とかならないものだろうか。
部屋の隅でヒッソリと食事を進める老夫婦は
しかめっ面こそしてないが相当に迷惑そう。
(トンデモない店に来てしまったな)
(ホントにそうですネ)
心の内でそうつぶやき合ってるに相違ない。

多勢に無勢ながら、負けてはならじとわれわれ、
殊更声を大きくして
「乾パ~イ!」―グラスを合わせたのでありました。

=つづく=