2016年10月28日金曜日

第1479話 ラブホ街の入口で (その1)

その宵はのみとも・M鷹サンとJR山手線・鶯谷駅で落ち合った。
乗降客の少ない南口は閑散としている。
以前、この場所でアホ警官の職質を受けたことがあった。
それも真っ昼間に―。

東京芸大方面に坂を上り始めたJ.C.に向かって
何をトチ狂ったか若いオマワリが
「もしもし、どちらへ行かれるんですか?」―こうききやがった。
カチンときたJ.C.、すかさず言い返したネ。
「ボクって、そんなに怪しい人間に見えますか!」―怒気を含ませた。
結局、アンちゃんとペアを組んでたベテラン警官の取りなしで
アホ警との真昼の決闘は避けられたんだがネ。
まっ、この顛末は以前にも書いたから、このへんでやめておく。

反対側の鶯谷駅北口には大衆酒場が軒を連ねている。
「信濃路」、「加賀屋」、「養老の瀧」、
ふむ、長野に石川に岐阜か・・・中部地方一色じゃありませんか。
3軒ともにせんべろ、せいぜい、にせどろ(二千円で泥酔)を
約束してくれる庶民の味方である。

そのうちの1軒でもよかったが
両者協議の結果、隣り街の日暮里に向かうこととし、
言問通りに通ずる駅前の階段を降りていった。
階段下には焼きとんの佳店「ささのや」がもうもうと煙を上げている。
安くて旨いが騒がしく、おちおち会話を交わしていられない。
よって今回は見送りの巻。

「ささのや」の手前を左折した。
このルートだと都内有数のラブホ街を縦断することになる。
するとラブホ街の入口、1軒の小料理屋の店先でツレが立止まった。
怪訝な顔の当方に向かって曰く、
「店のママがけっこう可愛いヨ」―何考えてんだ、この人?
ベッドの相方を選ぶワケじゃなし、
少しばかり美形の女将やママを見るたびに入店してたらキリがないぜ。
困ったものよのぉ・・・。

まあ、つられて店内をのぞき込んでみたら
なるほど、可愛いっちゃ可愛いかもネ。
結局は薬局、ラブホ街縦断を断念、
その店のカウンターに仲良く横並びと相成った。

さっそくママと言葉を交わし始める不肖ののみともであった。
やれやれ。
発音&ボキャブラリーからしてママは明らかに異邦人。
おそらく中華人民共和国の出であろう。
ただし、かの民族固有のつっけんどんな態度など微塵もなく、
接客ぶり丁寧にして所作もソフトだ。

しかしねェ、肝心の料理のほうはダイジョブかいな?
一抹の不安を抱えながら中ジョッキをカチンと合わせた。
供された突き出しは小海老のマリネである。

=つづく=