2016年12月8日木曜日

第1508話 改ざんされた「フィガロの結婚」 (その2)

一夜の文京シビックセンター小ホールである。
「改ざん!フィガロの結婚」である。
パンフレットにあった主宰者・宝概サンのお言葉。

当演目「改ざん!フィガロの結婚」は8年前に
ここシビックホールで、あるいは河合塾で
受験生対象に公演した作品に手を加えたものです。

河合塾では生徒に大変好評でした。
公演後のアンケートを回収して読むと、
「こんなにオぺラが面白いものだとは思いませんでした。
 受験が終わったら本当のオペラを見に行きたいと思います」
という回答が多かった。

こら、これこそ「本当のオペラ」だって。

ハハハ、宝概サン、ホントだネ。
しかし、8年間で3回だけの公演ってのは
ちと少なすぎるんじゃないの?

もっともこちとらだって
こんなユニークなパイオニアの存在を
まったく知らなかったんだから
誰かが世に知らしめない限り、
将来の発展も隆盛も望み薄になる。

とにかく入場料が入場料だけに予算は限られている。
演者はホウツキミヨコ声学教室に通う生徒と
客演2名で構成されており、
伴奏はオーケストラの代わりに女性ピアニストが独りのみ。
ただし、パンフレットには
”オーケストラのようなピアノを弾く人”とあった。
事実、彼女の活躍は目覚ましいものがあったのだ。

主役のフィガロと許嫁(いいなづけ)のスザンナ、
領主のアルマヴィーヴァ伯爵の歌い処は
ちゃんとカバーされてはいるものの、
気に入りの「バルバリーナのアリア」がカットされていた。

バルバリーナは伯爵邸お抱えの庭師の娘。
彼女のアリアは小品ながら哀切に満ちて心に響く。
「改ざん!!」ではバルバリーナが劇回し役に転じてしまい、
結果、アリアが削られることとなった由。

それでも全体的によくまとめられており、
楽しい一夜を味わうことができた。
ホウツキカゲキ団には「フィガロ」に限らず、
ほかの作品にもぜひチャレンジしてもらいたい。

あまり悲劇的なのは似合わないが
「セビリアの理髪師」、「愛の妙薬」、「こうもり」あたりは
ピッタリなんじゃないかしら?
ヴェルディの代表作「リゴレット」もじゅうぶん可能でしょう。