2016年12月26日月曜日

第1522話 期待通りの焼きとん屋 (その4)

ニューヨークの「NOBU」に比べたら
「味の笛」の北雪はタダとは言わずとも
ほとんどそれに近い。

さて、北雪の純米大吟醸。
切れ味鋭く舌の味蕾を襲ったあと、
爽快な香りが鼻腔を抜けてゆく。
わが舌にとって新潟の酒では
麒麟山とともに双璧である。

もはやつまみは必要としなかったが
新香の盛合せを所望する。
内容は赤かぶ、野沢菜、きゅうりぬか漬け。
なかなかのバランス感覚である。

店内は立て込んできた。
人気店だけに滞在時間は2時間までである。
まだ1時間も経っていないが
長居をしては店にも客にも迷惑がかかる。
新香を少々食べ残したまま、夜の街に出た。

外はもう真っ暗、目の前の「吉池」で
刺身でも見つくろい、家飲みにするかなァ・・・。
いや、何となく面倒だ、近場でもう1軒としよう。
ガードをくぐって線路の東側を徘徊し始める。

春日通りを横断すればアメ横に続く飲み屋街(上野6丁目)。
「大統領」か「カドクラ」か「タキオカ」か・・・
候補店はどこも混んでいそうだ。
アメ横方面には足を向けず、
むしろ人影の少ない5丁目を物色する。
いっそのこと昭和通りを横切って
レトロ感あふれる佐竹商店街にでも出向くか?
居酒屋「ますみ」ならカウンターに座れそうだし・・・。

進路を東にとった。
すると昭和通りにぶつかるちょいと手前、
右手に間口の狭い飲み屋あり。
焼きとんがメインの「おとんば 上野店」である。

店先の品書きに目を通すと、稀少部位も含めて
豚の臓物がズラリと揃っていた。
そういやあ、ここしばらく好物の焼きとんを食ってない。
毎晩、晩酌をする身にとって肝臓のケアは大事だ。
ウコンの錠剤は欠かさず飲んでいるが
鶏や豚のレバーの摂取も必要である。

迷うことなく入店に及んだ。
働く男女のスタッフがみな若い。
接客係はともかくも焼き手まで若い。
本当はオッさんやジイさんの焼くもつが好きなんだけどなァ。

=つづく=

「味の笛 本店」
 東京都台東区上野5-20-10
 03-3837-5828