2016年12月30日金曜日

第1526話 わさび愛しや (その1)

ここ数日、東京の街をあちらこちらと歩き回っている。
勝手気ままに足の向くエリアを訪れている。
浅草・上野・谷中・本郷・日本橋・銀座・有楽町・
神楽坂・門前仲町・向島・柴又と、
まあ、そんなところだ。

皇居を東京の真ん中に位置づければ、
行く先はイーストサイドに偏っている。
ウエストサイドは神楽坂くらいなものだ。
下町が好きだから、さもありなん。

その日は上野広小路を皮切りに中央通りを南下。
秋葉原・神田・日本橋・京橋・銀座を経て
有楽町にやって来た。
先頃、終了したNHKの大河ドラマ「真田丸」にも登場した、
織田信長の末弟、織田有楽斎の屋敷が
数寄屋橋辺りにあったことが町名の由来とされるが
異説もあって定かでない。

J.C.にとって有楽町は思い出深い場所である。
記憶をたどれば、中学一年生のとき、
今は無き日劇のいしだあゆみショーが最初。
翌年には日比谷スカラ座で
「太陽がいっぱい」のリバイバル・ロードショーを観た。
日比谷公園の東側にはかつて
映画街があったが地番は有楽町二丁目である。

1975年、ロンドンから帰国し、
初めての会社勤めも有楽町の免税店だった。
その頃、ひんぱんに利用した店で
現在も営業を続けているのは
食堂「いわさき」と居酒屋「八起」くらいのものだ。

職場では月に一度か二度、土曜出勤日があり、
その際はこれまた今は無きそごうデパートの地下で
昼めしの弁当を買い求めていた。
現在はその場所にビッグカメラが進出している。
そごうデパートの名前が出ると、
第一に思い起こすのはこの曲である。

  ♪      あなたを待てば 雨が降る
     濡れて来ぬかと 気にかかる
     ああ ビルのほとりのティー・ルーム
     雨も愛しや 唄ってる
     甘いブルース
     あなたと私の合言葉
     「有楽町で逢いましょう」  ♪

        (作詞:佐伯孝夫)

フランク永井の歌声が
有楽町に流れたのは1957年のことであった。

=つづく=