2017年6月9日金曜日

第1641話 小岩はコワいわ (その3)

新小岩の「彩波」。
突き出しのおでんのせいか
ここまでで腹八分目に達している。
焼きとんは打止めとしておこう。

最後の一品としてメニューボードに記された、
本日のサービス品をお願いすることに。
スパゲッティ・ボロネーゼは
サービス品とはいえ、たったの100円である。

おおかた洋食屋のハンバーグの付合わせみたいに
ホンのチョッピリ出されるものとタカをくくっていたところ
運ばれた皿はゆうに一人前はある。
いや、それ以上かもしれない。
どうしてこれが小さいほうのワンコインなの?
考えたって疑問がとけるハズもない。

追加注文などしなくてもよかったのに
つい、サービス品=100円にそそられて
いやしくもお願いしただけに食べ残すことはできない。
相方とは目と目で「頑張ろう!」、そう誓い合ったのだった。

皿からはスパイシーな匂いが立ち上ってくる。
匂いの主はイタリアンではまず使われないクミンだ。
インド、アラブ、メキシコではポピュラーな香辛料だが
イタリア料理でこの香りをかぐのは初めての体験である。

はるか昔、花の都・パリは
ヴォージュ広場の三つ星レストラン「アンブロワジー」で
クミンたっぷりのキャロット・ヴィシーを供されて
意表をつかれたことがあったが
まさかイタリアンでねェ。

とにかく力を合わせてこの難敵を打破せねばならない。
ターゲットは完食の二文字しかないのだ。
奮闘努力のかいあって
皿の上には2本のフォークが見られるのみ。
いや、マイッたぞなもし。

支払いは4千円ほど。
すみやかに済ませて夜の町に出た。
二人とも腹を抱えて笑い、もとい、腹を抱えて歩きながら
ときどきクミンの匂いのゲップを放っていた。
誰も見ちゃいないが行儀の悪いことである。

実は新小岩駅から「彩波」に向かう道すがら
気になる1軒の店先を通過して来た。
町の中華屋さんなのだが
店内をチラリのぞいたときに
ある記憶がまざまざとよみがえったのだった。

=つづく=

「彩波(いろは)」
 東京都葛飾区東新小岩5-17-26
 03-5670-8177