2017年6月1日木曜日

第1635話 あらためて 平目フライに 惚れ直す (その1)

「三ちゃん食堂」で一刻過ごしたあと、
すぐに電車には乗らず、駅周辺をブ~ラブラ。

  ♪   タンタンたぬきの 金の玉
     風もないのに ブ~ラブラ  ♪

である。
駅前の小ジャレた商店街を気持ちよく歩いていた。
すると、とある商店の店先に
おびただしい数の自転車が道をふさいでいる。

何だヨ、コレ?
まったくマナーの”マ”の字も感じられへん。
こんなふうに自転車を駐めるヤツの顔が見たいヨ、
ったく。
毒づいてはみたものの、1台や2台じゃないもんなァ。
ザッと数えて20台は車道にはみ出してるもんねェ。

赤信号 みんなで渡れば コワくない
クルマ道 みんなで駐めれば コワくない

っちゅうことなんだろう。
多摩川を渡っただけで
かくも町の景観が変わるものだろうか―。
これをおおらかと認めるか、不作法と断ずるか、
「TVリモコンの青・赤ボタンを押してください」―
こう呼びかけたら視聴者の判断は
半々に分かれるかもしれない。

これほどまでに人々を吸い寄せた商店は
昔ながらの大柄な青果店だった。
いや、青果店ではなく八百屋と呼ぶにふさわしい。
店内は黒山の人だかりで
余った人々が自転車もろとも
店外にあふれ出ているのだ。

こちらは自転車どころかまったくの手ブラ。
それこそスッポンポン、
もとい、スッカラカンのいで立ちである。
迷う間もあればこそ、気がつけば、
人波をかき分けて店内に立ち入っていた。

野球帽だかねじり鉢巻きだか忘れたが
店のオジさんが目の前で
絹さやえんどうの山を盛り付けている。
ややっ、驚いたことにけっこうな量の一山が
たったの200円じゃないの!

さっき60粒に及ぶえんどう豆を
やっつけて来たばかりなのに
無意識のうちに手が山に伸びていた。
品札には千葉県産と記されている。

=つづく=