2017年6月13日火曜日

第1643話 小岩はコワいわ (その5)

東新小岩の裏町の、
とある日本そば店の店先に立ち止まっている。
「N山そば店」は日本そばだけでなく、
中華系も提供する両刀使いだ。

そば屋のラーメンは当たりが多い。
このことは経験則から断言できる。
麺類とごはんものを組合わせた、
もりそばセットやタンメンセットがワンコインで食べられる。
庶民の味方を絵に描いたような優良店だ。
ほとんど儲けなどなかろうに―。

気にかけつつもさらに裏道を新小岩駅方面に歩くと、
すぐ数軒先に奇妙な店がまたもや現れた。
カフェのような居酒屋のような・・・
中をのぞくと何だ、なんだ!
デッカい犬が寝そべってるじゃないか。
ありゃ、数匹の猫までいるヨ。

しばらく呆気にとられていると、
どこから現れ出たのか1匹の猫が足元で戯れ始めた。
店内からはママらしい女性とくだんのデカ犬が出て来た。
しきりに入店をすすめられたが
どうにもふんぎりがつかず、
またの機会に先刻のそば屋とまとめてクリアするとしよう。

ほどなく駅前に到着。
すんなり電車に乗り込めばいいものをここで思案投げ首。
寅さん映画を想起させた「小川屋」のことである。
この町を再来するにしても
いつになるやら知れたものではない。
強烈なクミンの後味に苦しみながらも考えた。
ビールと餃子くらい二人で挑めば何とかなるだろう。

その旨、相方に伝えると消極的同意を得られた。
再び平和橋通りを北へ。
「小川屋」の先客は一人のみ。
餃子と野菜炒めでビールを飲んでいる。
こちらも速攻でビールと餃子を注文した。

だが、ちょいと待てヨ。
二人で来店してビール1本に餃子1皿じゃ申し訳ない。
侘しいし寂しいし、恰好もつかない。
第一、「奮闘篇」では
寅さんもるみちゃん扮する津軽の少女・花子も
中華そばをすすっているのだ。
「すみません、あとラーメン1つお願いします」

結局、餃子半皿で文字通り、
皿を投げ出した相方に失望しつつ、
残りをすべて完食したJ.C.でありました。

100円のスパゲッティ、激安の日本そば、
犬猫満載のカフェ、昭和の匂いの中華そば。
いやはや小岩はコワいわ。
いや小岩は小岩でもここは新小岩。
それだけに真にコワいわ。

=おしまい=

「小川屋」
 東京都葛飾区東新小岩5-13-2
 03-3697-0508