2017年6月16日金曜日

第1646話 60年の月日を数えて (その1)

その夜は北区・赤羽で飲む予定。
数日前に元部下のT村クンからメールが着信。
同じく元部下のA澤クンが新しい職場で昇進した由。
よってささやかな祝いの席を設けましょうとのことだった。

こういう報せはうれしい。
二つ返事でOKして都の北のはずれ、
JR京浜東北線・赤羽駅に降り立った。
大型連休中とあって
あらかじめ予約を入れておいたのは「やきとん大王」だ。

集合時間を先んずること90分。
さっそく駅東口を出て都内屈指の飲み屋街に踏み入った。
休日じゃまずダメだろうなと思いつつも
街のランドマーク、「まるます家」を目指す。

ああ、やっぱりな。
店先には10人を超える飲み助が列を成している。
どれだけの時間を浪費するのか見当もつかないので
即刻あきらめた。

煮込みと焼きとんの「八起本店」もよいが
同じ「八起」ならば、
有楽町ガード下の支店のほうにより愛着がある。
他をを当たろう。

思いついたのは10人も入れば満席の小体な日本酒バーだ。
店名を「たちばな」という。
ここを訪れたのは去年の2月。
とても寒い日の午後だった。

その節は最初に立ち飲みの「桜商店」でまず一杯。
めったに飲まないプレミアムモルツの中ジョッキで
おろしニンニクと青ネギいっぱいのレバテキをやった。
豚レバーはそこそこに旨かった。

調理担当のオヤジさんはしばしも休まぬ忙しさ。
それでも次々入る注文をさばいてゆく。
彼以上に忙しいのは接客係の娘のほうだ。
とても一人じゃ回らない。
それでも文句一つ言わず、健気に立ち働いている。

押し寄せる客は奥の立ち飲みコーナーに殺到し、
入口近くのテーブル席には誰も座らない。
あとで知ったことだが
テーブルは1人300円のお通し代が掛かるのだ。
そうだよネ、どんなお通しか判らんけれど、
そこをセーブすれば飲み物1杯余計に飲めるもんネ。
ちゃんと算盤はじくのが
呑ん兵衛の呑ん兵衛たる由縁でありまっしょう。

=つづく=