2018年8月9日木曜日

第1933話 ポモドーロとネッビオーロ (その1)

ずいぶん昔のことになるがワインを楽しむ会で
何度か顔を会わせた友と夕暮れどきのディナー。
近々、東京を離れるそうでしばしの別れ、
思い出に居酒屋じゃ味気ないから
イタリアンでも・・・となった次第である。
場所は谷根千界隈で合意をみた。

時間的束縛に追われて仕掛けは早め。
と言っても17時以降にオープンする店ばかりだ。
たまたま見つけたのが「バール・オステリア・ココム」。
地番は谷中だが最寄り駅は根津。
町の中心となる交差点から
善光寺坂を上り始めてすぐの場所にある。

15時に予約の電話で入れると、
応対してくれたのはマダムかな?
すでにこの時間もオープンしているとのこと。
渡りに舟とはまさにこれ。
1時間以内におジャマする旨を伝えた。

昼飲みに規制の厳しい文京区。
しかも若者とあまり縁がなく、
年寄りばかりが目立つ町、根津では
きわめて珍しい営業時間の設定といえる。

サッポロ黒ラベルで乾杯。
壁に書かれた膨大なワインリストに見入った。
イタリア全20州のほとんどを
カバーしているのではなかろうか。
いや、ご立派だ。

簡単には決めかねるのでアンティパストを注文しておく。
ちなみにコペルト(300円+)はバゲット込み。
イタリアンでバゲットかァ。
フォカッチャが望ましいのにねェ。

一皿目は小ムツと豆アジのカルピオーネ。
フレンチならエスカベシュ、和食なら南蛮漬けに当たろうか。
もともとは北西アフリカのイスラム教徒、
ムーア人がスペイン南部に持ち込んだもので
それが地中海沿岸に広く伝播した。

豆アジはごくフツーの小さなアジだが
小ムツはその5倍はあった。
頭こそ落としてあるものの、若鮎ほどの大きさだ。
よって硬い背骨は食べられない。
黒ムツの幼魚とみえてさすがに食味はよろしい。
ちょいと生臭みの残ったアジより、ずっと美味しい。

カルピオーネを食べ終えてワインを決定。
ランゲ・ネッビオーロ バラーレ・フラテッリ 2011年。
ネッビオーロはJ.C.が最も愛するワイン・セパージュで
しかもバラーレはバローロ地区の産である。
不味かろうワケもなし。

=つづく=