2018年8月10日金曜日

第1934話 ポモドーロとネッビオーロ (その2)

根津・善光寺坂の「バール・オステリア・コムム」にて
抜かれたランゲ・ネッビオーロは7600円+の値付け。
テイスティング時点で早くも香りが開いている。
安くはないが、この品質ならば高くもない。

2皿目のアンティはサルシッチャとかきの木茸のインパデッラ。
インパデッラはソテーのことだが新じゃがとプチトマトが加わる。
耳慣れないかきの木茸はえのき茸の1種。
太陽光線が当てられたせいで薄茶色に染まっており、
山えのきに近いものの、さほど色濃くはない。
自家製ではなかろうともサルシッチャがワインによくなじんだ。

イタリアンではプリモのパスタの前に
セコンドのメインを持って来るのが常。
鶏・鴨・豚と揃ううち、
茨城産美明豚(びめいとん)の香草オーヴン焼きを―。
香草がローズマリーで付合わせは新じゃが。
新じゃががダブッてしまったが
こちらはニンニクがよく効いて飽きることはなかった。

何よりも豚ロースがきわめて良質、
歯応えのある脂身は噛み締めると甘みがにじみ出る。
久しぶりに旨い豚肉に出会い、その豚を咀嚼しながら
近々、上等なとんかつを食べたいな、そう思ったことである。

締めのパスタはセコンドよりずっと選択肢が拡がる。
択んだのはわりとシンプルなスパゲッティで
モッツァレッラとバジリコのトマトソースと記されていた。
スパゲッティ・ポモドーロのアレンジ版は想像と異なり、
賽の目状のモッツァレッラが散っている。
余熱で柔らかくはなるものの、溶けるまでには至らない。

濃厚なトマトソースがたっぷりと絡まり、
パスタを凌駕しまくるのでバゲットの助けを借りた。
しかし、この濃いめの味付けがネッビオーロと出逢い、
口内に不協和音をかき鳴らしながらも
やがては手に手を取り合ってノドの奥に滑り落ちてゆく。
南イタリアでは多用されるトマトソースだが
北イタリアのワインとの相性もけして悪くはなかった。

相方が2杯ほどしか嗜まないからワインが残っていた。
3杯目をすすめるためにフォルマッジの3種盛合せを―。
内容はタレッジョ、ゴルゴンゾーラ、グラナ・ロディジャーノ。
そこにオマケの仏産ブリー。
アクセントとして柑橘のコンポートが皿の中央に鮮やか。
キンカンかと思ったら、極小のマンダリン・オレンジとのこと。
ゴルゴンにはピッタリだ。

約2時間の滞在で、お勘定は17000円弱(税込み)。
来春の再会を約し、相方を根津駅まで送ってサヨウナラ。
当方は坂を戻り上がって鶯谷へでも繰り出しますかな。
もちろん行く先はラブホじゃないヨ、酒場だヨ。

「バール・オステリア・コムム」
 東京都台東区谷中1-2-18
 03-3823-4015