2018年8月29日水曜日

第1947話 これがホントの盆踊り (その4)

大田区・蒲田の「天義」に独り。
こちらも店主独りの切盛りである。
あらためて店内を見渡すと、お世辞にもキレイとは言えない。
女手がない飲食店の宿命がコレだ。

壁のボードに天種が書き込まれている。
”幻の魚 ギンポ”が真っ先に目にとまった。
ほう~、ギンポでっか! こりゃ見過ごせないな。
目の前の店主にお好みで揚げてもらうことを告げた。

蒲田はキリンの工場のある横浜市鶴見区・生麦から
そう遠くはないので懸念したがビールはスーパードライ。
その大瓶をお願いした。
ところがこれがヤケにヌルい。
ヌルいアサヒなら冷たいキリンのほうがはるかによい。
行き当たりばったりの飛び込みは
こんな手抜かりがあるから危険だ。

突き出しの小皿はきゅうり・白菜・たくあんの新香盛り。
気落ちしながらビールをグビッ、たくあんをポリッ。
何だかやるせないなァ。
競馬観ても判んないし・・・。

通した注文はキスとギンポ。
天つゆ・粗塩・大根おろしが並べられる。
おろしは目の粗い鬼おろしである。
2枚付けのキスはホックリといい感じに揚がっていたが
残念ながらコロモが好みではない。
チリチリの花を咲かせないタイプはフリッターに近い。
当然、大きめ1尾のギンポも同じこと。
後悔の思いが頭をもたげてきた。

これでお勘定では愛想がなさすぎ。
山形の惣邑を冷やで所望した。
酒米・羽州誉を歩合50パーセントに精米したものだ。
スルスルすべる辛口の奥行きを感じる。

天ぷらは穴子と何を血迷ったか、にんじんを追加。
穴子の素材自体はよく、ギンポの上をいった。
2つ付けのにんじんはスーパーの惣菜コーナーレベル。
ふ~ん、惣邑に惣菜ねェ、字面だけは合ってるな。

天種はほかに魚介が海老・あじ・いか・かき揚げ。
野菜は玉ねぎ・なす・にんにく・ゴーヤ・レンコン。
考えるてみれば、当店の天ぷらは明らかに天丼向き。
この点、中野ブロードウェイの「住友」に似ている。

店主はかなりの競馬好きとみえる。
カップルが去って店主と二人きりになる。
こちら喫酒、あちら競馬予想。
一つ席を空けてはいるものの、至近距離に横並び。
ビミョーな空気が流れているが違和感はない。
互いにそれなりの人生経験をしたからこその間合いだ。
頃合いをみてのお勘定は4300円。
こんなものでしょうな。

=つづく=

「天義」
 東京都大田区西蒲田7-67-11
 03-3738-4712