2018年8月28日火曜日

第1946話 これがホントの盆踊り (その3)

田園調布の鰻屋「平八」。
14時過ぎに店先に立った。
ところがランチタイムは13時半までときた。
またしてもガッビーン!
いいサ、いいサ、鰻がダメでも鮨がある。

今の時期なら上方寿司の「醍醐」が
鮎の姿寿司を始めているハズ。
本店は休みでも駅前ビルの支店は大丈夫だろう。
テイクアウトして近場の公園でいただきましょうゾ。

いやはや、ツかないときは、とことんツかないねェ。
支店までお盆休みときたもんだ。
ことここに到って田園調布に見切りをつけた。
再び目黒線に乗り込み、
隣りの多摩川駅で多摩川線に乗り換える。

途中の下丸子か武蔵新田を徘徊してもいいんだが
小さな町に大きな期待を掛けても
不発に終わる可能性が高いし、とにかく時間が時間だ。
一気に終点の蒲田へ。
大田区きっての繁華街なら何とかしてくれるだろう。

「平八」のせいで気持ちは鰻に傾いていた。
西口のガード下沿い、
鰻の串モノを出す立ち飲み酒場「うなぎ家」へ。
トホホ、またしても休みだヨ。

気を取り直し、そのちょいと先、
本格的うなぎ屋「寿々喜」に到達した。
はたして今度は営業中。
商ってはいたものの、順番待ちの客が5名。
この暑いのに並んでなんかいられるかい。

幸い「うなぎ家」のそばに天丼の「天義」を見つけてある。
何と創業半世紀にならんとするそうだ。
艱難辛苦を乗り越えて暖簾を守ってきたのだろう。
これは立ち寄らなくっちゃ。

古びているうえに玄関周りがゴチャゴチャしており、
整理整頓の不行き届きが気になったけれど、
ぜいたくは言っていられない。
引き戸を引いて入店した。

店内はカウンター8席のみ。
天ぷら屋だというのに鰻の寝床である。
先客はカップル1組だけ。
すでに天丼を平らげて冷酒を酌み交わしていた。

カウンターの奥のTVが競馬中継を映している。
その下で競馬紙やらスポーツ紙を広げていた店主が
ヨッコラセと立ち上がって
「いらっしゃいませ!」
(ハイ、いらっしゃいました!)
口には出さず、胸のうちで応えた。

=つづく=