2019年10月7日月曜日

第2235話 下北の街 様変わり (その3)

俳優の柄本明サン御用達の「トロワ・シャンブル」。
そのカウンターで文字通り、肩身の狭い思いをしている。
店内には女性ヴォーカルの「枯葉」が流れていた。
英語版の「オータム・リーヴス」だが
誰が歌っているのやら判らない。
サリナ・ジョーンズの声ではないな・・・。

当店のブレンドコーヒーは浅煎り軽めのカゼブレンドと
深煎り重めのニレブレンドの2種類。
煎りが浅くて酸っぱいタイプのコーヒーを飲むと
なぜか胸焼けに苦しむことの多いJ.Cは
煎りが深くて苦めのニレを所望する。
イタリア料理屋のエスプレッソは大好きなのに
喫茶店のオーソドックスなのはまったくダメなんだ。
一緒に1種類しかないサンドイッチもお願いした。

カウンター内にはいわゆるマスターとバイト風の女の子。
外で接客にあたる男の子もバイトだろう。
ほぼ満席だから会話のさざめきはかなりのボリュームで
とても喫茶店でくつろぐ雰囲気じゃない。

何だってこんなに人気があるのか、
次から次へと客が押し寄せて
相席用の大テーブルには
まだ若干の空席があるにもかかわらず、
「申しわけありません」-女の子がお断りしている。

マスターが淹れてくれたコーヒーをそのままワン・シップ。
ん? んん? コイツはいいゾ!
エスプレッソ以外のコーヒーを
旨いと感じた経験はあまりない身ながら実に旨い。
ザラメの砂糖をチョイと落として軽くステア。
う~ん、これもいいなァ。

サンドイッチが整う前に飲み終えちゃったので
同じものをお替わり。
コーヒーをお替わりする自分に驚く自分がいた。
2杯目はクリームを使ってみた。
植物油脂ではないホンモノにより、コクが一段増す。
いやァ、ブレンドコーヒーって美味しいものなんだねェ。
両目からウロコがポロポロと落ちました。

サンドイッチがまたユニーク。
中身はハム&レタス、玉子&レタスの2種で
珍しくも食パンの片面のみ軽くトーストしてあった。
結果としてサックリ&シットリのW効果を生んでいる。
あらためてマスターの横顔に見入るJ.C.でありました

退店後、再び驚いたのは10年以上前に訪れた、
カレーの「茄子おやじ」と海鮮居酒屋「とぶさかな」が
「トロワ・シャンブル」と同じ地番の代沢5-36で
ともに生き長らえていたこと。
偶然を懐かしみつつ、ご同慶の至りである。

散策のため、小田急線の北側に移動した。
一番街商店街に焼きとん「椿」は残っていたが
昭和中華の「来々軒」の姿が消えた。
おでん屋「宮鍵」ですら
物件の新しい借り手が現れたら閉業の予定だという。
とにかくめったやたらにカレー屋ばかりが繁殖している。

以前より歩行者が徘徊しやすくなった下北の街。
歩きにくくてイヤだった昔に戻ってほしいような、
そうでもないような、様変わりを目の当たりにして
複雑な気持ちを引きずりながら電車に乗りました。

=おしまい=

「トロワ・シャンブル」
 東京都世田谷区代沢5-36-14 湯浅ビル2F
 03-3419-6943