2019年10月24日木曜日

第3248話 22年ぶりのタコス (その2)

前フリが長くなったが、その日の午後は
足立区・北千住の街をぶらぶらしていた。
軽く昼めしもよし、晩酌の早仕掛けもまたよし。
宿場町通りの奥に
タケリア(タコス屋)風の店を見つけた。

店頭のメニューボードを眺めていると、
筋書通りに中からスタッフが現れる。
こういう場合はだいたい女性なんだが男性だった。
そこは男女差別とは無縁のナイスガイ、J.C.、
たまにゃ、ライムを搾ったコロナを1本、
一気にラッパ飲みしてみるか?
余裕の心持ちですんなり入った「ヒゲタコス」。
アラサーと思しき彼はオーナーで
なるほど、鼻の下にヒゲを蓄えていた。

コロナの前に生ビールがほしい。
銘柄を訊けば、デンマークのカールスバーグ。
迷わずお願いして、おつまみ3点盛りというのも通した。
海老&アヴォカドのマヨ和え、スモークサーモンマリネ、
チキン胸肉冷製は、みなタコスの具に成り得るもの。
ビールの合いの手としても過不足ない。

続いてコロナをと思いきや、ここで店主曰く、
同じメキシコから珍しいビールが入荷したんだと―。
香辛料バッチリのチリ・ビヤというんだと―。
気が進まなかったが、せっかくだからトライする。

ンムム、ホントだぜ、こいつは辛えや。
ビールがスパイスにブルンバルンと煽られてるみたいで
これならつまみは要らないかもしれん。
でも、正直言って好みじゃないヨ。

タケリアに来てタコスを食わないわけにはいかない。
フィリングがいろいろあるうち、
3点盛りとかぶらぬよう、ビーフを所望した。
それにしても何年ぶりのタコスだろう。
ニューヨーク以来だから少なくとも22年は経ってる。

当時、懇意にしていたマリアとの別れの晩餐は
ウエスト・ヴィレッジの「Mi Cocina(ミ・コチーナ)」。
グワカモレで始めてタコスをつまみ、
牛ハラミのファヒータなんぞも食べた記憶がある。

彼女は中米、エル・サルヴァドルの首都、
サン・サルヴァドルの出身。
鮨や天ぷらもよく食べてくれたが
最後はマルガリータを飲りながら・・・
ってことでメキシカン。
まさか混乱の母国に帰りはすまいが
人種のるつぼのあの街で
今も明るい瞳(め)をして生きてるだろうか―。

ビーフタコスの中身は挽き肉状のタコミートに
レタス、トマト、アメリカンチーズ。
せっかくのタコスも懐旧の思いにとらわれて
味がよく判らなかったがネ

だけどサ、ラップのBGMはないんじゃないの?。
ちょいとばかりセンチになったオッサンには
トリオ・ロス・パンチョスあたりを聴かせておくれヨ。
それも「ある恋の物語」だとしたら
何も言うことありまっしぇん。

「Mi Cocina」
 57 Jane St. (Hudson St.との角)
 627-8273

「ヒゲタコス」
 東京都足立区千住3-56
 050-5597-1924