2019年10月11日金曜日

第2239話 アメ横裏のマツコ・デラックス (その2)

上野と御徒町を南北に結ぶアメ屋横丁。
その裏路地というか、通路というか、
とにかくめったに人の通らない道筋にある「まんぷく」。
しょっぱい味噌汁とウスターソースに手を焼いていた。

かなりの以前だから記憶が不鮮明とはいえ、
なんでんかんでん、こんなに塩辛い店ではなかったハズ。
倅の代になって現代風に手直しした結果だろうか?
いずれにしろ、作り手の味覚に疑念を抱く結果に―。

隣りに座っていた先客のロースかつ定食が運ばれた。
うわっ、デッカいな!
熱さも3cmはありそうだ。
値段表を見ると、これが1400円。
高級とんかつ店と同サイズにしては安めの値付けである。
まあ、場所が場所だし、
掘っ立て小屋(失礼!)みたいな物件だしネ。

前述した通り、奇妙なカウンターの造作のせいで
客側からは二人の下半顔しかうかがいしれない。
亭主のほうはとんかつをカットする際に
屈みこむので横顔を垣間見ることができたが
ほぼ正面にいるカミさんのほうは
鼻から下のあご周りが見えるのみ。

ここでハッと思い当たった。
まことに無礼ながら、その可視できる部分が
タレントのマツコ・デラックスに驚くほどクリソツ。
はたして上半顔はどうだろうか?
このまま打っちゃって帰れんぜ。

食事が済んで食器類をカウンターに上げたとき、
受けとる彼女の全貌を初めて拝むことができた。
なあんだ、マツコよりずっと可愛いじゃん。
心なしかホッとしたヨ。
おっと、今度はマッちゃんに失礼した。
ごめんネ、マツコ!

アメ横裏のマツコに一目惚れしたわけじゃないが
以後、間を空けずに二度も再訪。
メンチかつライス・味噌汁付き(650円)は
薄い小判形で豚挽きのみのメンチが2枚。
この日は豚汁の煮詰まり感浅く、
ライスのベチャつきも前回ほどじゃない。

ここでやめとけばいいものを
つい、ロースかつを試したくなった。
それもスケジュールがタイトな昼下がりにだ。
たまたまその日は揚げるのに時間のかかるロースかつに
注文が集中したうえ、店側の順番間違いも重なって
到着まで30分以上を要した。

急いで食べようとするも巨大な肉塊が立ちはだかる。
そのせいで、あとの約束に遅刻しちまった。
とはいえ上野はとんかつ発祥の地。
優良店が目白押しにつき、ここしばらくは
上野のとんかつ屋めぐりにいそしむつもりであります。

「まんぷく」
 東京都台東区上野4-1-5
 03-3831-3457