2011年12月5日月曜日

第198話 余震でグラリと揺れた夜

半年以上も前のハナシで恐縮だが
大震災のちょうどひと月後のことだった。
その日は6週に1度の理髪日に当たっていた。

渋谷区役所の真ん前の小さなビルの4階、
客のほうが恥ずかしくなるほどゴージャスな店名のヘアサロンで
さっぱりしたあとに向かったのは代田橋。
渋谷のPARCO裏から
阿佐ヶ谷方面へ行くバスに乗り込もうとしていた。
するとそのときグラグラッと久々に大きな余震がきた。

バスの運転手が
「交通機関の情報が判り次第、ご報告します」―
アナウンスしたほどだから相当なものだ。
乗客もそれぞれに携帯やラジオでニュースを見聞きしては
知り得たことを口々に発し、
騒然とした空気の中にもささやかな連帯感が芽生えていた。

大原の交差点で下車し、すぐ近くの食堂「布美よし」へ。
当夜の狙いは当ブログ、
”にせどろ千夜一夜”シリーズの候補店の物色。
普段あまり出没しない代田橋・笹塚界隈で
3軒ほど周遊する腹積もりだった。

「布美よし」は昼の15時から翌午前2時までの超変則営業。
店先に”お食事”と書かれた青暖簾がかかっていた。
殺風景な店内ではバイトらしき女の子が無愛想。
向いてねェなあ、客商売に!

品書きに朝鮮漬(200円)を見とめた。
そうだよ、昭和30~40年代はみんな朝鮮漬と呼んでいた。
どこのドイツがいつからキムチなんて言い出したのだろう。

評判のもつ炒め(330円)を頼んでみたもののパッとしない。
肉豆腐(250円)しかりであった。
店にゃ悪いけれど無駄足を踏んじまったか・・・。

甲州街道を隣り町の笹塚まで戻る。
飲食店が軒を連ねる観音通りを行ったり来たり。
2軒目として選んだのは「千歳鶴酒蔵」。
左隣りの「なる潮」なるふぐ屋に見覚えがある。
今は昔、ニューヨーク時代に取引があった、
某メガバンクのチーフディーラー、
K島氏にふぐちりを振る舞われた記憶がある。
かれこれ十年余り前のことで
当時、彼は笹塚支店の支店長たったと思う。

「千歳鶴酒蔵」では千歳鶴二級酒の大徳利を上燗で。
地鶏の焼き鳥(3本450円)は塩焼きにしてもらった。
可も不可もないナ。
ミックスフライ3点盛り(750円)というのがあり、
平目・アジ・キス・牡蠣から3つ選ぶ寸法だ。
牡蠣を外して注文してみた。
これまた可も不可もなく、白身は明らかに平目ではない。
おおかた深海魚のホキであろうよ。
締めくくりに千歳鶴枡酒を冷やで1杯飲り、お勘定。

この段階でまだ収穫はナシ。
まあ、こんな夜もあろうて。
さて、これからどう身を振ったものよのう・・・。

「布美よし」
 東京都世田谷区大原1-63-8
 03-3325-9910

「千歳鶴酒蔵」
 東京都渋谷区笹塚1-16-5
 03-3466-4465