2011年12月6日火曜日

第199話 大正生まれの「常盤食堂」 にせどろ千夜一夜 Vol.5

実のところ、昨日のハナシにゃ続きがあった。
代田橋の「布美よし」、笹塚の「千歳鶴酒蔵」と
立て続けに空振りしてツーストライクと追い込まれ、
いったん打席を外し、策をめぐらせることと相成った。

笹塚観音通りには目星をつけた候補があと2軒ある。
「おかめ亭」なるスタンド割烹と
独立していながらも都内各地に点在する「常盤食堂」だ。
「常盤」は「ときわ」と、ひらがなで名乗る店が圧倒的多数。
特段、秀でた店はなくとも底割れしない安心感がある。
ましてや当夜はノーボール・ツーストライクに追い込まれた。
しかも当食堂は創業大正11年の老舗、安全策でゆくしかない。

サッポロ黒ラベル中瓶(500円)に
ロースハムサラダ(300円)を注文。
夫婦であろう、オバさんが外で接客、オジさんは厨房で調理。
ほかに誰も見当たらず、二人だけの切盛りのようだ。

ビールを空ける間もなく運ばれたロースハムが意外や意外、
ことのほか良質にして、添えられたポテサラもけっこう。
この店は使えるナとほくそ笑んだ。

仕上げのオムライス(800円)も
下町の洋食屋風に、下世話ないい味を出している。
唯一の減点材料が化調にまみれた厚揚げとわかめの味噌汁。
しかしトータルで見れば、この店は当たりだ。
けっして長打ではないが、ドン詰まりのテキサスヒットじゃないし、
ボテボテの内野安打でもなく、クリーンな単打といえよう。

すぐにウラを返すつもりが京王線沿線は縁遠く、
なんやかやと再訪まで7ヶ月を費やしてしまった。
一次試験はパスしたものの、
厳しさの増す二次試験の結果やいかに?

此度もビールと一緒に頼んだのはロースハムサラダ。

ロースハムは2枚付け

それにビールのよき友、串カツ(280円)である。

串カツも2本付け

豚肉の間には玉ねぎの代わりに長ねぎが潜んでいる。
町場の精肉店と似たような値段に脱帽だ。

ビールを飲み続けながら燗酒も欲しくなった。
大関の1合瓶(450円)を上燗で所望する。
同じ大関生冷酒の1合瓶も同値。
酒に合わせてほうれん草のおひたしとアジの開きを。
写真に撮るのを忘れたこのアジが身厚で旨かった。
温泉旅館の朝めしに出て来るのとは大違い。

料理はほかにオムレツ(280円)と豚生姜焼き(450円)。

刻んだハム入りのオムレツ

下味をつけて焼く豚生姜

どちらも大衆食堂のレベルを超えている。
味噌汁以外にハズレなく、
”にせどろ千夜一夜”シリーズにふさわしい佳店であった。

会計後、再び観音通りを歩きながら思った。
毎月18日がご開帳の小体な笹塚観音は
通りのいったいどこに鎮座ましますのだろう。
行ったり来たりしてみたが、ついぞ出くわさなかった。
八百屋のオバちゃんにでも訊いたほうが早かったナ、こりゃ。

「常盤食堂」
 東京都渋谷区笹塚1-21-10
 03-3466-2059