2011年12月14日水曜日

第205話 かつては無縁の高円寺 (その3)

今回もまだ高円寺にハマッたままである。
「民生食堂 天平」に出会えたのは
TVロケで伺った焼き鳥店のおかげ。
さもなければ有形文化財ともいえる食堂には
永遠にめぐり逢えなかったかもしれない。

恩人ならぬ恩店の名は「大和鳥」。
所在地の中野区・大和町に掛けて「やまとちょう」と読む。
小体な店とはいえ、親父サンがただ独りで営んでいる。
したがって飲みものなんかセルフサービス。
それも相当に人使いが荒いらしい。

取材時は店を借り切って迷惑を掛けたから
飲み仲間を何人か誘い、出直した。
実はこの夜も「天平」に立ち寄り、
ビールをポンポン抜いてオムレツやかきフライをつまんできた。
当夜のメンバーは5名。
中には最近くるぶしを骨折したひょうきん者が居て
歩行がままならないと、自転車で駆けつけて来る始末。
本人曰く、足を折ったら徒歩よりチャリンコが楽なんだと―。

「天平」から「大和鳥」へは徒歩1分。
あらかじめ奥の小上がりを用意してもらってある。
くだんの親父サン、ことのほか張り切ったとみえて
最初に出た刺盛りがきわめて良質。
本まぐろの赤身・中とろは言うに及ばず、
ぶりも〆さばも高円寺のレベルではない(失礼!)。

ビールはそこそこにチリ産赤ワインに切り替える。
そうしておいて名物のささみ明太焼きとうずら玉子焼きだ。
自慢の品だけにどちらも秀にして逸。
殊にうず玉は殻付きのまま焼かれてくる。
J.C.の長い人生において殻付きうず玉は2度目。
最初は春日部の焼きとん店「福島や」で今年の春のこと。
人生お初が半年間に重なるなんて、こんなこともあるんだねェ。

そういえば、ご無沙汰だった若者の町に
たかだか1ヶ月の間に2度もやって来た。
おかげで老頭児の来訪に耐え得る店を何軒か、
発掘できただけでも大いなる収穫だ。

もともと杉並区は都内でも指折りの若者エリア。
区の統計によれば人口に占める20~30代の比率の高さは
高円寺が突出していて区内139街区中、
高円寺南二丁目は1位、
高円寺北三丁目が3位にランクされている。
道理でオヤジにゃ敷居が高いワケだよ。

最後に余談ながら地名の由来は宿鳳山高円寺。
所在地は駅からほど近い高円寺南四丁目だ。
いまだ目にしたことはないが多少の縁もできたことだし、
近々、参詣に訪れてみようとひそかに企んでいる。

=おしまい=

「大和鳥」
 東京都中野区大和町2-44-8
 03-3337-0990