2011年12月23日金曜日

第212話 ラ・ボエーム (その1) 古く良かりしニューヨーク Vol.3

今日は心ウキウキのイヴ・イヴ。
”本命”は明晩にキープしておくとして
今宵は”二番手”とグラスを合わせなければならない。
いや、グラスどころか身体を合わせねば・・・。

と、言いたいところなれど、
本日の予定は麻から、もとい、朝から麻雀ときたもんだ。
恋の季節にいったい何の因果かね?
まっ、ボケ防止にはこれが一番だから仕方がないや。

てなこって、時節柄クリスマスを取り上げてみましょう。
今を去ること十数年前、
ニューヨークでよく働き、よく遊んだバラ色の時代。
「読売アメリカ金曜版」に
「J.C.オカザワのれすとらんしったかぶり」を連載していた。
そのコラムから選抜する”古く良かりしニューヨーク”シリーズ。
久しぶりにその第3回をお送りしたい。
では、まいります。

=ラ・ボエーム=

音楽好きの方が「ラ・ボエーム」と聞けば、
思い起こすのはプッチーニのオペラだろうか、
それともアズナブールのシャンソンだろうか。


アメリカ人にもっとも人気のあるのがこのオペラで
映画「月の輝く夜に」でも効果的に使われていた。
第3幕、アンフェール門の別れのシーンでは
初めてオペラを観るヒロインのシェールに涙を流させている。


シャンソンもアズナブールの哀切きわまりない歌声が胸を打つ。
グレコの「枯葉」、モンタンの「パリの空の下」と並ぶ、
屈指の名唱と言っていい。


去年のクリスマスイヴ。
その名も「La Boheme」というビストロに出掛けた。
オペラの第1・2幕がイヴという設定なのだ。
殊に第2幕、カルチェラタンの「カフェ・モミュス」のシーンが白眉。
F・ゼッフィレッリ演出のメトの舞台は息をのむ美しさだ。


そんな経緯も手伝い、イヴのディナーはここに決めていた。
グリニッジ・ヴィレッジの路地裏にある店の雰囲気はイメージ通り。
バルドー、ドロン、ベルモンド、
壁に貼られたスターたちのポートレートが懐かしい。


ほかにも長いことドロンの婚約者だったけれど、
結局、一緒にはなれなかったロミー・シュナイダー。
作曲家にして歌手、そして俳優としても活躍しながら
病に倒れてしまったジャック・ブレル。
ああ、帰り来ぬ日々よ、青春よ!


=つづく=