2013年2月5日火曜日

第506話 田端でバタバタ (その3)

北区・田端の「立飲スタンド 三楽」でくつろいでいる。
ほかに客はオジさんが一人ずつ。
われわれを含めて計4人・・・何ともさびしいネ。
ここに来たのは二度目だが、切盛りしているのはオバちゃん独り。
オバちゃんといっても率直にいえばオバアちゃんだ。
立ち飲みだから詰めれば20人は入れるスペースを
独りでこなすのはかなり難儀であろうヨ。
まっ、心配してもしょうがないけど・・・。

2軒目は同じ北口でも山手線の内側にあって、ラクに10分は歩く。
千駄木と駒込の中間に位置する不忍通りの動坂下交差点に近い。
あらかじめ目星をつけておいた店は「三好弥」だ。
この屋号は洋食屋に多い。
都心には少なくても下町にはけっこうあるんじゃなかろうか。
ただし、この店は洋食屋に非ず。
メンチカツなど洋食系をカバーしているものの、
どちらかというと、和系に軸足を置いた創作料理といった趣きである。

入店すると先客はゼロだ。
近頃、個人経営の飲食店の客足がヤケに鈍っているような気がする。
チェーン店なんかどうでもいいから
外食するなら個人の店に行きましょうや、なるべくならサ。
そうでもしないと日本の食文化は滅びちゃいますぜ。
あ~、イヤだ、ヤだ、ヤだ。

冷えた身体にカツを入れる燗酒の銘柄は愛知・安城の人生劇場。
ネーミングがイカすじゃないか。

 ♪ 吉良の仁吉は 男じゃないか
   おれも生きたや 仁吉のように
   義理と人情の この世界    ♪
        (作詞:佐藤惣之助)

東映映画で吉良の仁吉に扮したのは
辰巳柳太郎と月形竜之介。
個人的には辰巳のとっつぁんが好きだ。
相方の飛車角は何といっても鶴田の浩サンだろう。
       
人生劇場の合いの手は最初にごぼうの唐揚げ&クレソンのサラダ。
意表をつく組合せだが、これはこれでよし。
金目鯛のかぶと煮は身肉を相方に任せ、
こちらは目ン玉にしゃぶりつく。
煮魚・焼き魚の目には目がない。

二重丸を付けたいのはメンチカツであった。
観音裏の「ニュー王将」には及ばぬものの、
都内屈指のメンチカツが田端にございました。
付合わせのキャベツがまた、
丁寧でしなやかで、これは観音表のとんかつ「ゆたか」に匹敵しよう。

おのおの満足して会計を済ませ、
流れたのはハス向かいにあったカラオケスナック「K」。
衝動的に入ったといってよい。
生ビールを飲んでいると、歌好きの単身客がポツリぽつりとやって来る。
店のオンナの子(ジッサイはオバちゃん)に促され、
常連客の方々にも背中を押され、
歌ったのはM鷹サンがテレサ・テン、J.C.は荒木一郎。
立ち飲みに始まって創作料理にカラオケスナック、
めったに来ない田端の街をバタバタと楽しんだ呑み助二人でありました。

=おしまい=

「立飲スタンド 三楽」
 東京都北区東田端1-12-23
 03-3893-5361

「三好弥」
 東京都北区田端1-12-13
 03-3821-4156