2013年2月7日木曜日

第508話 みちのくひとり旅 (その2)

悪天候のせいもあって白河に長居はしなかった。
時雨のなか、駅に戻ったものの、
みちのくの旅を続けるための列車はなかなか来ない。
底冷えのする待合室で魔がさしたように飲んでみたのは
自販機で100円の苺オーレだった。

いや、不味いのなんの。
こういうものを飲む人がいるから
存続している飲みものなんだろうが
ヒドく人工的な味わいに愕然、半分も飲めなかった。

郡山で乗り換え、やって来たのは福島駅。
この日は隣県から駆けつけたのみともと駅で待合わせ。
福島は高校一年の夏、
サッカー部の合宿で訪れて以来だから実に45年ぶり。
投宿した旅館「大亀(おおかめ)」はホテルに建て替わっていた。

時刻は17時前、暖簾を出している店はほとんどない。
何とか見つけたのは「大政食堂」なる印象深い屋号の一軒だ。
再会を祝し、スーパードライで乾杯する。
立て続けに3本の大瓶が空いた。

白河でラーメンを食べてからそれほど時間が経っておらず、
腹は減っていなかったが
注文したのはホルモン炒めとかつ丼のアタマだ。
これがどちらも上出来でビールにもピッタリ。
ハシゴの最初の一軒として上々のスタートを切ることができた。

夜のとばりが降りる頃となり、
2軒目に選んだのは「たこ寅」というおでん屋。
さっそくの燗酒は会津の末廣である。
酒はよかったが突き出しの中華風くらげがイケない。
化調まみれの甘酢で和えられている。
苺オーレに続き、本日2発目の愚作。

気勢をそがれたカタチながらメインのおでんはなかなかだった。
車麩と白滝に始まり、おぼろ昆布を乗せた豆腐をしみじみと味わう。
ぜいたくにも鯵と鰯と秋刀魚のすり身を合わせたつみれが白眉。
複雑というより、まろやかな仕上がりとなっている。
里芋・大根・厚揚げはごくフツーなれど、締めの鳴門わかめがクリーンヒット。
煮込まず、でんつゆにシャブシャブっと泳がせるだけで滋味タップリだ。

3軒目はバー「グットフェローズ」。
バーテンダーは若い女性だった。
お手並みを拝見するにはシェイクものを注文するに限る。
1杯目はジンベースのホワイトレディを
コアントロー少なめのハードシェイクでお願い。
コアントローを制御するのは甘みを抑えるため。
ハードシェイクの狙いは砕けた細かい氷片が表面に浮くことで
最初の一口がキリリとした味わいになるのだ。
さあ、ヤングレディの力量はいかに?

=つづく=

「大政食堂」
 島県福島市栄町12-24
 024-522-1355

「たこ寅」
 福島県福島市新町1-2
 :024-522-3626