2013年2月13日水曜日

第512話 みちのくひとり旅 (その6)

年が明けても引き続きアルコール漬けである。
このままデカめのビーカーかなんかに身体ごと詰めてもらって
どこぞの小学校の理科室に保存してほしいくらい。
肉林に迷ってはいないが酒池に溺れていることは確かであろう。

招かれたお宅はご馳走のオンパレード。
古代ローマの貴族にでもなった気分だ。
ヒットは子持ちなめたがれいの煮つけ、さすがに本場である。
真鱈白子のムニエル、これもまいう~だった。
白子は河豚より鱈が好きだから余計だ。
いずれにしろオトコに白子は必要不可欠ですもんネ。

コレを書きながらTVをつけたら
NHKの「歌謡コンサート」で五木ひろしが歌っている。
愛媛・松山が舞台の「夜明けのブルース」。
けして悪い曲ではないがご当地ソングなら
デビュー曲の「よこはま・たそがれ」のほうがずっといい。
詞も曲も歌唱もはるかにいい。
レベルというよりディメンションが違うんだ。
おい、ひろし!
オメェはいったい、42年もの間、何してやがったんだ?
そう問いかけたくもなっちまう。

ハナシをみちのくに戻しましょう。
夕暮れせまって東京に帰ろかな? と思ったものの、
乗りかかった船から下船するにはパワーが必要、
動くのも億劫になってるからなァ。
でもって、ステイング・ワン・モア・ナイト。

日付けが変わった。
これといってやることもないから
大晦日の「ゆく年くる年」で紹介された大崎八満宮に詣でる。
成田山新勝寺ほどじゃないが
けっこうな石段が目の前にせまっていた。
自慢の足腰につき、なんなくクリアして国宝の御社殿に向かう。

つつがなく参詣を済ませ、と言いたいところなれど、
同行者に財布を賽銭箱に投じたおめでたいのがいた。
いえ、酔っ払った勢いとかでなく、たんなるミステイク。
現金はともかくもカード類は紛失すると厄介だ。
賽銭箱は縦格子の下に段違いV字型の取り込み口があり、
財布はそこに引っ掛かっていた。

細い腕なら格子のすき間に差し込んで取れないこともないが
傍から見たら賽銭泥棒もいいところ。
おみくじ売場に助けを求めたのはほかならぬJ.C.である。
ほどなく紅い袴の巫女さん登場。
彼女が手を伸ばしてくれて事なきを得た。
しっかし、賽銭箱に財布を落としたヤツなんか初めて見たぜ。

一件落着、八満宮入口の「とんかつ石亭 八幡茶屋」で
ヒレカツとロースカツをつまみに一同、冷たいビールを飲む。
「とんかつ石亭」の本店は市内の高森という町にある。
おしなべて仙台のとんかつはレベルが高い。
愚かなる旅行者はまっしぐらに牛タンだが、あれは大きな過ち。
あんなモンのどこが旨いというのだろう。
まっ、憎まれ口もほどほどに夕刻には杜の都をあとにして
バックオーライ!のみちのくの旅でありました。

=おしまい=

「とんかつ石亭 八幡茶屋」
 宮城県仙台市青葉区八幡4-5-9
 022-718-8398