2013年2月8日金曜日

第509話 みちのくひとり旅 (その3)

福島駅に近い繁華街のバーにいる。
店名は「グットフェローズ」。
隣りに座っているのみとももグッド・フェローだ。

ホワイトレディにちょいと注文をつけてみたが
はたしてバーテンダレスのシェイカーさばきは
意想外に見事なものだった。
けしてオーバーアクションにならず、
立ち居振る舞いにソツがない。

その姿をもいちど見たくなって
2杯目はブランデーベースのサイドカーを。
ホワイトレディのジンがブランデーに代わるだけで
レシピはまったく一緒だ。
ベースがウォッカになればバラライカ、
テキーラならマルガリータ、
ラムの場合はXYZとその名を変える。
いずれもカクテルの定番、世界の人びとに愛飲されている。

会津の地酒が効いてきたのか、
このあたりから記憶が途切れとぎれ。
あとで相方に聞いたら
オニオングラタンスープとビーフシチュウを味見程度に食したらしい。
肝心の味のほうはまったく覚えちゃいないけどネ。

そろそろ福島を離れなければ・・・夜の街を駅に向かった。
前方に駅舎が見えたとき、はたと気がついた。
のんきなことに手ぶらで歩いていたのだ。
日頃から荷物を持たない習慣が
とことん身にしみついているんだねェ。
旅行者が旅行カバン忘れてどうすんだべサ。
よたよたと引き返す「グットフェローズ」であった。
なんか最近、こういうのが多いんだよな。
いよいよアルツの前兆だろうか・・・。

しかし世の中、何が幸いするか判らない。
忘れもののおかげで酔いが覚めてきた。
こういう展開になるとJ.C.は強い。
底なしとは言わないまでも二枚腰が功を奏するのだ。

おそらく駅ビルの中だったと思う。
カフェレストランの名前は「デュッカ」だったかな?
ワインの品揃えが豊富でしかも値付けが良心的な店だった。
スーパーで買えば、千円を超えるチリ産のピノ・ノワール、
コノ・スルが2千円ポッキリ。
ただし、この時間にワインを1本開ける気力はすでにない。

そこで銘柄は定かでないが(たぶんサッポロだった)、
生ビールの中ジョッキを2杯飲んだ。
ここ数年の晩酌は途中何を飲んでも
最後はビールで締めくくることが多い。

45年ぶりの福島をあとにして
乗り込んだのは杜の都・仙台行きの列車であった。
みちのくの旅はなおも続く。

=つづく=

「グットフェローズ」
 福島県福島市置賜町7-3
 024-524-3660

「デュッカ福島」
 福島県福島市栄町1-1
 024-526-0911