2015年1月6日火曜日

第1006話 春の海老マヨ 回鍋肉

今年はまだ初詣に行っていない。
たぶんパスすることになるのだろう。
去年もしなかったんじゃないかな。
一昨年は仙台、その前年は向島で済ませた。
もっとも初詣にノルマがあるじゃなし、
済ませるものではあるまいがネ。

新春、不忍池のほとりを歩む。
この冬はいったいどうしたことだろう。
渡り鳥の渡来が驚くほど少ない。
たくさん来ているのは見た目がどこか滑稽なキンクロハジロ。
シベリア渡来の小さな渡り鳥
毎冬、常連のオナガガモはかなり数を減らしている。
マガモより一回り大きい
ほかに目立つのはいにしえ都鳥と呼ばれ、
先人の愛顧を集めたユリカモメくらい。
マガモなんぞ、ただの一羽も見当たらず、
警戒心が強く、人前をはばかるバンを数羽確認できただけだ。

ポカポカ陽気に恵まれた一日は
陽が沈んだあとも寒さが和らぎを含んでいる。
これからどこへ繰り出そうか?
不忍池の東は上野、北は根津、南は湯島。
晩酌にも晩飯にも事欠くことはない。
エッ? 西はどうだってか?
ハハ、西には日本の最高学府が暗闇の中に沈んでいるぞなもし。
安田講堂地下の「東大中央食堂」なんか、
東京の学食ベストスリーに数えられようが
肝心の酒が飲めないからネ。

進路を北へとり、不忍通りを真っ直ぐ北上する。
谷底に位置する根津の交差点に差し掛かる手前、
広東酒家の「楽翠荘」に入店した。
美味しいもの少ない旧遊郭の根津にあってここは出色。
よって何度か利用している。
以前は同じ交差点近くの「中華オトメ」をよく訪れたが
ここ数年、ガクンと味が落ちて足が遠のいている。
料理人が代わったとしか説明がつかない。

ビールは気に入り銘柄の中瓶。
料理はハーフポーションのラインナップが多彩で
中からめったに注文しない海老マヨを選んだ。
マヨのからみが美しい
海老・蟹・蝦蛄と、甲殻類はみな好きだが
海老マヨのチョイスは魔が差したんだろうねェ。
ところが意想外にもこのデキがよかった。

中瓶1本とともに存分に楽しみ、紹興酒に移行する。
追加料理はこれまたハーフの回鍋肉。
広東ではなく四川だネ
うむ、こちらもなかなかの仕上がりを見せている。

飲み食べ終えて胃袋の状態はまさしく腹八分目。
ここ半年あまり、愛猫ともども食事の量をコントロールしている。
バカ猫の健康を維持して長生きさせようという腹積もり。
しかし猫ばかりにひもじい思いをさせるのは動物虐待になるから
一緒につき合ってやっているわけだ。
これならどこからも文句は出るまい。
まったくもって飼い主の鑑(かがみ)だネ、J.C.は―。

「楽翠荘」
 東京都文京区根津1-1-15
 03-3821-7422