2015年1月19日月曜日

第1015話 理髪のあとさき (その3)

髪を理して男前によりみがきのかかったJ.C.、
待望の晩酌タイムを迎えている。
普段は渋谷きっての立ち飲み酒場「富士屋本店」に立ち寄るか
日本最古のメトロ・銀座線に乗って都内有数の盛り場に繰り出す。

候補地の選択肢は3箇所もあっていずれもが銀座線沿線。
便利といえば便利ながら、行く先を迷うのが常、
いろいろあり過ぎるのもまた悩みを生み出す素になる。

三つの候補地はまず最初に神田。
表通りと裏通りにそれぞれ別経営の「三州屋」があり、
行き着けは裏のほう。
ここは銀ムツのあら煮とカニサラダがとても旨い。
1皿千円弱の刺身盛合わせがなかなかで
殊にめじまぐろや上りかつおが組み込まれていたらオススメ。

お次は上野広小路。
御徒町駅のガード下にある「味の笛」が気に入りだ。
1Fが立ち飲み、2Fが座り飲みの両面(リャンメン)待ちは使い勝手がよい。
工場直送のスーパードライの生が爽快で
つまみには鮭とばや新香盛りがよろしい。
小腹が空いたらマカロニサラダか塩焼きそばを取る。

そして最後が地下鉄の終点・浅草。
改札を上がると、目に前には「神谷バー」。
ここではポテトサラダと串カツで生ビールをグイッと飲る。
ジョッキを2杯ほど飲ったら名代の電気ブランに移行しよう。

さて、散髪を済ませたその夜であった。
結局、「富士屋本店」にも行かなければ、
銀座線の乗客にもならなかった。
どこで生まれた発想だろう・・・なぜか
理髪前に飲んできた「丸木屋商店」に舞い戻ったのだ。 
こういう不可解な行動はまず取らない。
魔が差したとしか言いようがなく、われながら理解に苦しむ奇行だった。

本日2度目の「丸木屋商店」で飲んだのは
またもやビールの大瓶と二級酒の燗。
つまみに選んだ新香はこの時期、白菜漬のみだった。
真っ赤な鷹の爪が散見されたのに
無意識のうちに七味を振りすぎ、結果として白菜は激辛。
ブラックマヨネーズじゃないが、ヒーハーの巻である。

せっかく角打ちに来たのだから定番の缶詰を開けてもらわなきゃ・・・。
そう思ってお願いしたのが明治屋のウインナー缶。
さして美味しくもないのに角打ちではときたま注文する。
小さな缶のわりにギッシリ詰まっており、
ヒマに任せて数えてみたら11本もあったぞなもし。

さすがに11本を独りで食べると飽きる。
チューブ辛子をつけたりもしながらふと見ると、
卓上にハチ公ソース中濃なんてのがあるじゃないか。
製造元のハチ公ソース株式会社は隣り町の富ヶ谷に本社がある。

忠犬ハチ公は確か秋田犬のハズ。
まさか大手のブルドッグに張り合うつもりのネーミングでもなかろうが
秋田犬とブルドッグ、まともにやり合ったらどっちが強いんだべか?

=おしまい=

「丸木屋商店」
 東京都渋谷区神山町7-5
 03-3467-7668