2015年1月15日木曜日

第1013話 理髪のあとさき (その1)

地下鉄の車内で見掛けた本を読む少女は表参道で下車していった。
立ち上がると意外にもスラリとして、いわゆるバックシャン。
健康そうなうしろ姿に幸多かれと祈るJ.C.であった。

こちらはこれから2ヶ月に一ぺんのヘアカットである。
おっとその前に心が晴ればれとしたせいか一杯飲りたくなった。
さいわい予約時間まで少々の余裕がある。
渋谷界隈でサク飲みとなれば、第一感は「富士屋本店」だが
明治神宮前(原宿)から歩くには距離があり過ぎるし、
そこまでの時間的余裕はない。
さっき彼女が降りた表参道で乗り換えればよかったなァ、
などと、今さら後悔しても始まらないのだ。

でもそこは餅は餅屋というか、蛇の道はヘビであったぞなもし。
振り向けば横浜、ひらめけばひざポンでありやした。
1駅乗り越して代々木公園まで行く。
ヘアサロン方面に向けて歩くこと5分、
やって来たのは角打ちの「丸木屋商店」だ。

1月初旬ながら暖かい夕暮れ。
しかも足を急がせたものだからビールが欲しい。
餅は餅屋なら酒は酒屋であろう。
ちゃあんとキリン・サッポロ・アサヒの揃い踏みときたもんだ。
もちろん望めばサントリーだって
奥から(こちらが店の表だが)出て来るハズである。

ビールは大瓶(500円)、中瓶(450円)、小瓶(330円)の価格付け。
まっ、酒屋の角打ちとして安くはない。
最近、何度か訪れた「巣鴨 ときわ食堂」は大瓶が480円だからネ。
リストに小瓶はアサヒだけとある。

アサヒの大瓶をもらってつまみを択ぶ。
冬だけメニューは

 月曜―湯豆腐  火・水・木曜―煮込み  金曜―煮込み豆腐

といったラインナップ。
その日は水曜、よって煮込み(430円)をお願いしたわけだ。

小鉢にあふれんばかりの煮込みは豆腐が主役。
続いて大根、豚のシロもつ少なく、あとはゴボウだ。
薄味仕上げながら、熱々で身体が芯から温まる。
好みのタイプとは異なるものの、これはこれで悪くない。

酒は酒屋(しつこいかな?)にして主に東日本の銘酒が並ぶ。

 秋田・高清水本醸造、北海道・国士無双純米(各390円)
 秋田・白神山地の四季特別純米、新潟・吉乃川吟醸、
 東京・澤乃井純米大辛口(各410円)
 石川・天狗舞純米(490円) 富山幻の瀧大吟醸(530円)

といったところだ。

大瓶を飲み干してなお、若干の時間があった。
日本酒を1杯飲っておこうか―。

=つづく=