2015年1月27日火曜日

第1021話 汝の隣人を愛せ (その6)

旅日記@グルノーブルのつづき。

とりあえず、近所のスーパーマーケットに行ってみた。
このホステルに日本人の姿なく、
同行してくれたのはオランダ人のカップル。
彼らは肉や野菜を買ったが、こちらは調理済みのものを物色。
親切な二人だったのに名前を聞き忘れた。

ここで痛恨の失策を犯す。
手頃な値段だと早合点して買ったボイルド・ポークが
なぜか高かったうえにまったく口に合わない。
半分も食べられず、捨てるハメに陥る。
赤毛のアンのセリフじゃないけど、
あまりにも現実的にすぎる食物だった。
人生、こんなこともあるんだ。

食後、日本の実家や友人に絵ハガキを書く。
なんとなく空腹感を覚えながらも洗濯を済ませ、
久々のシャワーを浴び、こうして日記をつけている。
熱いシャワーがうれしかった。
豚野郎はさておき、とてもいい気持ち。

もの心ついてからというもの、
フランスはあこがれの国であり続けた。
もちろん美食大国としての認識がある。
あゝそれなのに、人生最初のフランスでの食事は大はずれ。
どうにかこうにか気を取り直し、翌朝はマルセイユへと旅立つ。

西暦2015年(今年ですが)に舞い戻り、
2週前のビヤホール「K」である。
イヴォンヌとミレイユに彼女らの故郷の思い出話を熱く語るJ.C.。
ジュネーヴからグルノーブルまで一緒だったヨランダのくだりでは
ミレイユが身を乗り出して額(ひたい)と額が触れんばかり。
何となれば、彼女たちの伯母の名前もまたヨランダというじゃないか。

じぇじぇ! まさか、まさか・・・、もしや、もしや・・・、
息をつくひまもあらばこそ、
ヨランダ伯母さんの履歴やら容貌やらを聞かされたものの、
こちとら顔すらほとんど覚えていないんだから確かめるすべはない。
でも、驚いた。
ミレイユ曰く、伯母さんは今年で61か62歳になるとのこと。
年がピタリと合っていてまたもや、じぇじぇ・・である。
好奇心旺盛なフランス娘は伯母さんに電話を掛け始めたぜ。
おい、オイ。

ことここに及んで沈着冷静なJ.C.も
44年前、ホッペに受けた口づけを思い出してソワソワし始める。
ヤケにノドが渇き、中ジョッキから大ジョッキに切り替える始末。
姉妹にも小ジョッキのお替わりに加え、名代の電気ブランをとってやった。
ついでにスモークサーモンとカキフライを追加注文する。
こうなりゃ、金に糸目をつけない大盤振る舞いでいくぞなもし。

=つづく=