2015年1月29日木曜日

第1023話 横綱大鵬が泣いた日

33回目の優勝を成し遂げた白鵬が協会批判だなんだと、
逆に批判の矢面に立たされている。
角界というところは梨園にひとしく、実にメンドくさいところだ。
そういう世界だからこそ、
横綱としてのさらなる自覚を求められるのも判らなくはないが
ちと可哀相。

サッカーのアジア杯で本田が審判団を批判し、
60万円(だったかな?)の制裁金を課せられた。
本人には痛くもかゆくもない金額だろうし、
別段、メディアその他に批判されることもなかった。
プロ野球でも選手や監督が審判にたてつくのは日常茶飯事だ。

まっ、対遠藤戦での遠藤コールにイラついたように
白鵬には常日頃から
日本人力士へのひいき目に対する憤懣が蓄積されている。
それがポロリと口をついて出たのだろう。
横綱としてほめられたことではないにせよ、
横審の審議委員がこぞって非難するのも大人気ないように思う。
取組をライブで、さらにリプレイを見たが白鵬の指摘する通り、
確かに同体というより白鵬に分があったのも事実だ。

さて、その偉大な横綱・白鵬が
リスペクトしてやまないもう一人の偉大な横綱・大鵬。
読者におかれては
「何だ、またかヨ!」―あきれる方もおられようが
三たび例の旅日記の登場である。

実はJ.C.、大鵬引退の報をパリのシャンゼリゼで知った。
ときに1971年5月19日(引退は前日)。
よって、その日の日記をまたもや引用してみたいのであります。
お許しあれ、そして先をお読みくだされ。

午後、米映画「Love Story(ある愛の詩)」を観るために
セーヌ左岸のサン・ミッシェルに向かう。
東京で観てきたばかりだが何度でも観たい。
オープニングとラストのセントラル・パークはほんとうにキレイだ。
ただ、幕が降りる前に席を立つ観客には失望した。

サン・ジェルマン・デ・プレのニューススタンドで
M村クンにやる映画雑誌、「シネマ’71」を買った。
その後、シャンゼリゼのJALへ日本の新聞を読みにいく。

あの大鵬が引退。
子どもの頃は大鵬に強かった押し相撲の房錦ファンだったから
むしろ敵視していたけれど、
いつしか好きになっていて、寂しささえ感じる。
彼のような力士はもう永遠に現れないだろう。
インタビューで涙をぬぐう顔に子どものようなやさしさがあった。
プロ野球では長嶋が大活躍を続けている。
スポーツ選手の宿命の重さを思い知らされた。

22時15分。
オリエント・エクスプレスでウィーンへ発つ。
パリで行動をともにした3人と固い別れの握手。

ミスタープロ野球はその3年半後に引退した。
好敵手不在とはいえ、偉大な横綱はまた現れた。
しかし、スポーツはいいねェ、実にいい。
この稿を綴っているのは28日未明。
一夜明けたら全豪オープン、錦織―ワウリンカ戦である。
昼めしにはハムサンドでも作っておいて
ビールを飲みながら観戦しようっと―。