2015年1月30日金曜日

第1024話 世界で一番寒い村 (その1)

ひと月以上も前になるけれど、
その日の午後は昼めしを家で食べ、くつろいでいたのだろう。
NHK―BSをただ、ぼんやりとながめていた。

「名作選プレミアム8 世界一番紀行 ~世界で一番寒い土地~」、
番組のタイトルに心惹かれ、われに返る。
あとはもう、TV画面に釘づけの巻である。
その姿たるやそれこそ十字架に釘打たれたイエス・キリストの如し。
ジーザス・クライスト!
そりゃそうだヨ、あちらがJ.C.なら、こっちだってJ.C.だ!
もっとも信者の数ではいささか水を開けられてはいるがネ。
なんちって!

ずいぶん昔に何かの本で読み、意表を衝かれたことがあった。
世界中の国の首都で
冬の平均気温が一番低い都市を読者はご存知だろうか?
食事会や飲み会の席上、ことあるごとに
「さて、ここで問題です」―こうして出題したが
正解者はただの一人も出なかった。

何のことはない、ロシアのモスクワ、
フィンランドのヘルシンキあたりが関の山。
かなり地理に明るい向きでもアイスランドのレイキャビクがせいぜいだ。
まあ、レイキャビクが出ただけでも評価に値する。

正解はモンゴルのウランバートル。
横綱・白鵬の生まれ故郷でもありますネ。
内陸性気候のモンゴルの冬はかくも寒いのだ。
まっ、盲点といえば盲点なのでしょうヨ。

これまた書物から得た知識だが
モンゴロイドの容貌の二大特徴ともいえる目細(めぼそ)と鼻ペチャは
人類が寒さと闘い続けた結果、産出された進化の賜物だという。
確かにデカ目では寒風にひとたまりもなく、
涙が凍ってまぶたが開かなくなるおそれすらある。
鼻にしたってコーカソイドみたいに高かったら鼻先まで血が通わず、
真っ赤なお鼻のトナカイさんみたいになっちゃうだろう。
ふむ、低い鼻梁にもそれなりの利点があるってこった。

番組が取り上げた世界最寒の土地は
ロシアのサハ共和国・オイミャコン村だった。
ギネスブックにもそのように登録されている。
地球上ではもちろん南極や北極のほうが寒いが
あくまでも人類が定住している土地でのハナシである。

取材班がオイミャコンに入る3日前。
ヤクーツクの魚屋には驚いたネ。
天を仰いで直立に凍りつくサカナたち
魚種はオームリだと思われるが
これじゃすべての鮮魚が冷凍品だ。

=つづく=