2016年8月4日木曜日

第1418話 立ち飲み 侮るべからず (その5)

門仲の「ますらお」である。
焼きとんのカシラとシロは炭火焼きのワリにちっとも旨くない。
カシラは塩が決まっていないし、
シロは串の先と元とで焼きムラがはなはだしい。
隅田川の両サイド、いわゆる東京の下町に
焼きとんの優良店は数知れず。
だのに、このレベルじゃまったくダメじゃん。

天は二物を与えずの諺そのもの。
鮨職人に肉系は畑違いでノウハウがないから、如何ともしがたい。
まっ、店の特性を認識できただけでも
それなりの成果はあったと自分で自分を説得した。

数週間後。
またもやJ.C.オカザワの姿を門仲に見ることができた。
何とならば「ますらお」でじっくりと、
腰を落ち着けて飲んだことがないからだ。
もっともそれは、かなわぬ想い、見果てぬ夢、
当店は立ち飲み居酒屋につき、腰が落ち着くわけがない。

今宵の相棒は飲む、食う、歌うと、
三拍子完ぺきに揃った盟友・O戸サン。
待合せ場所は間違えようのない深川不動尊にしてあった。
半世紀以上も前から
ここの縁日にはなれ親しんだ思い出のスポットである。

おきまりのビールを飲んだあと、
即座に気に入りのへべす酎ハイだ。
相方もこの酎ハイにはぞっこんであった。

最初の注文はこちらの2品。
今が季節のこち刺し
淡白な中に繊細な味覚が冴えて
もっと大衆に愛されてよい夏の白身魚である。
お次は真鯛の刺身
天然モノだけに身肉が色濃い。
どちらも分量少なめながら、たったの500円。
これじゃ文句の出ようハズもない。

店名にちなんで清酒・益荒雄を冷やで所望した。
う~ん、ちょいとモッタリ感が気になって好みではない。
いまだ未食の牛すじ煮込みを追加する。
これも何だかなァ・・・やっぱり肉モノはアカンわ。

締めにはおきまりのにぎりである。
本日は珍しい煮あさりであった。
あさりは数年前、日本橋「吉野鮨本店」で食べて以来だろうか?
すばらしくはないけれど、江戸前シゴトは感じられた。
結局は薬局、
刺身と鮨に限るのがこの店の正しい使い方なのであろうヨ。

それにしても老舗酒屋の角打ちを含め、
こんな佳店があるから立ち飲みはやめられませんわ。

=おしまい=

「ますらお」
 東京都江東区富岡1-5-15伊藤ビル2F
 03-5809-8256