2016年8月12日金曜日

第1424話 リオの男たち (その3)

地球の裏側、リオデジャネイロでは
体操男子団体の金メダルに続いて
個人総合も内村航平が王者に輝いた。
個人の二大会連覇は実に44年ぶり。
メキシコ&ミュンヘンの加藤沢男以来だ。
両大会における加藤の雄姿は
リアルタイムで観たこの目に今も灼きついて消えない。

加藤はスゴかったが内村もスゴかった。
最終の鉄棒にあんなドラマが待っていようとは夢にも思わなかった。
それにしてもウクライナのオレグ・ベルニャエフ 。
TVの画面で初めて見ていったい、どこのどいつだ?
そう思われた方も少なくなかろう。

伏兵中の伏兵というかウクライナの秘密兵器が彼だ。
体操界ではむしろ後進国のウクライナにあって
6種目すべてをハイレベルでこなす万能選手。
詳細は知らぬがキャリアはロシアで培われたハズ。
内村をあそこまで追い詰めるとは
いやはや、トンデモない若者が出てきたものである。

ところがベルニャエフ を退けた内村の偉大さは
妙なところで実証される。
まずは団体戦のスコアをご覧いただきたい。

  日本・・・274.094点
 ② ロシア・・・271.453点
 ③ 中国・・・271.122点
 ④ 英国・・・269.752点
 ⑤ 米国・・・268.560点
 ⑥ ブラジル・・・263.728点
 ⑦ ドイツ・・・261.275点
 ⑧ ウクライナ・・・202.078点

お気づきだろうか?
ドイツとウクライナの目茶苦茶な点差に!
1位日本から7位ドイツまで13点ほどの差なのに
7位と8位は60点も離れている。
あきれてモノが言えないとはこのことだ。

ここに個人戦で内村が大苦戦した最大の要因がある。
団体総合ではメダルの望みがまったくないウクライナは
あえて団体を棄てターゲットを個人総合に絞った。
団体の金を目指して結束した日本とは真逆の戦略といえる。
唯一無二の得点源、ベルニャエフを温存した(出場2種目)結果が
無様な歴史的低得点につながったというわけだ。

相手は若さに加えて休養十分。
こちらは団体の、しかも全6種目をこなしたあとで
疲労は極限に達していたハズ。
ところが、天はそこをちゃあんと見ていてくれた。
そのごほうびが鉄棒のあの演技、
ピタリと決まったあの着地であったのだ。

=つづく=