2017年3月8日水曜日

第1574話 ある日旅立ち (その8)

にぎり鮨4カンじゃちょっともの足りないなァ・・・。
あと2種4カンいっちゃおうかなァ・・・。
そう思って品書きを手に取り、
サカナたちのラインナップに目をこらす。

ん? 何だ? ナンだ?
ドヤドヤと入り口付近が騒がしい。
入店してきたのは明らかにジモティの団体である。
テーブルのすき間をぬってアリの行列状態は
奥の小上がりに収まった。

ひぃ、ふぅ、みぃ・・・数えてみたら総勢9名。
別段、珍しくも何ともないが
瞠目したのはその男女比である。
なんとオバさん8人にオジさん1人、
まさに黒一点でオスマン・トルコのハーレム状態じゃないの。
大したもんだよ、カエルのションベン。
アリ集団は実のところオットセイ集団だったのだ。

こちとらテメエの注文すら忘れて
しばらくはオットセイ・ウォッチングにいそしむ。
ビールを数本頼み、
各自好みのランチメニューを選択してゆく。
一番人気はあじフライ定食のようである。

あじフライはそれほど好まないが
世間一般にファンの多いことは知っている。
酒にも飯にもピタリと寄り添うからなァ。
しかも地元の海の幸とあらば鮮度良好にして
刺身やタタキでいける素材を揚げるんだもの。

J.C.が一画を占める大テーブルにカップルがやって来た。
アラサーの夫婦とみえる。
同じカップルでも恋人同士と夫婦は何となく判別できるものだ。
彼らのオーダーは生しらす丼と海鮮丼。
この二つも当店の人気商品であるらしい。

われに返ってにぎりの追加だ。
ウスバハギをいただいたものの、
やはり本カワハギを看過すること能はぬ。
おそらくこれも肝付きで現れるだろう。
そしてキンメダイである。

う~ん、さすがにご本家、カワハギはウスバの上をいった。
しっかりとしたテクスチャーに濃密な旨みが宿っている。
ただし、肝にそれほどの違いはない。
いわゆる甲乙つけ難しである。

ビール600円、ウスバ&アオリ600円、カワハギ&キンメ600円。
トータル1800円を支払って満足の笑み。
陽光を背中に浴びて東海道を東へ。
取りあえず大磯まで歩いてみよう。

=つづく=

「えびや食堂」
 神奈川県中郡大磯町国府新宿324
 0463-71-0719