2017年3月27日月曜日

第1587話 やって来たのは練馬区・江古田 (その3)

西武池袋線・江古田駅南口の大衆割烹、「お志ど里」である。
西島三重子の「池上線(ニューバージョン)」を聴きながら
この稿をしたためている。
ニューバージョンといってもテイチクからCDが出たのは
2004年の昔だけどネ。

そんなことよりニセ平目だ。
ふぐ刺し、いわゆるテッサさながら薄造りにポン酢で来た。
けっこうなボリュームである。
若者は歓ぶだろうなァ・・・そう思いながら一箸つける。

平目特有の弾力をまったく感じない。
むしろシットリ感が前面に出ている。
はて? コレはいったいどんなサカナであろう。
白身は白身ながら、超安値の530円でこの量だ、
日本近海から水揚げされたものではあるまい。

白身のうちでも平目は真鯛を凌駕する高級魚。
こんな値段で提供できる道理がない。
じゃあ、何なんだ!
ツラツラと白身魚の名前を思い浮かべてみる。

マコガレイ・メイタガレイ・スズギ・ヒラスズキ・マゴチ・
ホウボウ・メバル・カサゴ・シロギス・クロダイ・イシダイ・
イシガキダイ・キンメダイ・カワハギ・ウマヅラハギ。
ちょいと白身のカテゴリーを拡げて
クロムツ・ギンムツ・マダラ・ヒゲダラ。
そのいずれにも当てはまらぬ。
超高値のノドグロやキンキはハナから外してある。

ふ~む、マイッたなコレには―。
しばし思案黙考の巻である。思い当たったのは
とある淡水魚であった。
その名はティラピア。
誰が名付けたか知らぬがイズミダイ(泉鯛)というヤツだ。
スーダン・エジプトを流れるナイル川が
原産地の一つとされ、
俗にナイルティラピアとも呼ばれる。

半世紀も以前に今上天皇がタイ国王に贈ったサカナとして
メディアでもたびたび紹介されているティラピアである。
生臭みとは無縁のクセの無さ、
そこそこの美味しさは万人向けの食用魚といえる。

でもなァ、日本近海の平目と較べるとねェ・・・
その劣勢は覆うべくもない。
とりわけこの季節の寒平目は白身の王者と断言しても
けして過言ではないのだ。
断定はしかねるが7割超えの確率で
目の前のお造りはティラピアであろう。

=つづく=