2017年3月9日木曜日

第1575話 ある日旅立ち (その9)

徒歩で大磯の町に到着。
大磯の第一感は明治から昭和にかけて
政府要人の別荘地となったことだろう。
伊藤博文から吉田茂まで
ほかにも山縣有朋や大隈重信など、
そうそうたる宰相が名前を連ねている。

あとは大磯プリンスホテルと
そこに併設される大磯ロングビーチくらいだろうか―。
まっ、一般人が訪れても面白味薄い土地柄で
要するに庶民性とは無縁なのだ。

別段、散策すべき街並みとてなく、大磯駅の改札を通って
おりから入線してきた宇都宮行きに乗車の巻。
上野駅で「小洞天」の焼きそばさえ購入しなければ
小田原の和食堂、熱海の中華料理店、
あるいは三島のうなぎ屋で昼めしを食べていたハズ。
ホンのちょいとしたことがきっかけで
予定はコロリと転んでしまう。

しかし考えようによっちゃ、
おかげで本カワハギとウスバハギの食べ比べが可能になった。
しかも本わさびを携帯していたため、
その美味に拍車をかけることさえできたのだった。
歓ぶべし。

電車は大船に停車。
ここで少々迷った。
夜の約束まではかなりの時間的余裕があるから
京浜東北線に乗り換えて山手の港の見える丘、
それとも石川町からチャイナタウン、そんな手は悪くない。

結局は大船で降りずに横浜まで行った。
そこから京浜東北で一つ南に戻り、桜木町で下車。
桜木町とくれば横浜のダウンタウン、野毛であろう。
昼から飲める店にこと欠かないしネ。

でもそれじゃ、二宮駅のベンチ以来、
ずっと飲み続ける破目に陥る。
休肝日など設けたことのない身、せめて休肝タイムは必要だ。
よって街をブラブラするにとどめた。

そうして再び京浜東北線に乗り込み、
宵闇せまる頃には東神奈川駅に降り立った。
当夜ののみとも・O戸サンと待合せて
2~3ヶ月前にも訪れた「根岸家」の敷居をまたいだのである。

この店は16時の開店。
ところが浅い時間の予約がとれなかった。
おそらく3回転目かな?
入口の脇の四人掛けテーブル席に着いた。
相席は必至だろうヨ。

=つづく=